フォード・フォーカスRSが公開
公開 : 2015.03.03 22:10 更新 : 2017.06.01 02:11
320ps以上を発揮する2.3ℓターボ・ユニットを搭載する第3世代のフォード・フォーカスRSの写真をいち早くキャッチすることに成功した。
この新しいフォーカスRSの一番の注目は、駆動方式にバリアブルAWDが採用されたことにある。その公式なパフォーマンスとテクニカルな詳細、そして価格や発売時期については、3月のジュネーブ・モーターショーで明らかになるはずだ。
フォーカスRSの一つ下のポジショニングとなるスポーティ・モデル、フォーカスSTとの大きな違いは、ダイナミック・トルク・ベクタリング・システムを備えるAWDが装備されることだ。
フォードでは、開発段階でFWDとAWDの両方を検討していたが、ヨーロッパのフォード・パフォーマンス・ディビジョンは、最終的にAWDを選択する決断をしたという。
クラスをリードするコーナー・スピード、限界付近でのハンドリング、そしてユニークなドリフト能力などを加味しての判断だという。
AWDシステムには、2枚の電子制御のクラッチ・プレートが使用される。このクラッチは、リア・ドライブ・ユニット(RDU)の左右両輪に装備され、リミテッド・スリップ・デフのような動きをするのが特徴。
RDUは、フロントおよびリアのそれぞれのホイールにパワーを分配することになるが、1秒に付き100回ものモニタリングを行うという。
トルク配分は、フロントとリアが0:100から100:0までで、コーナリング、ターンイン・スタビリティなどによってその割合は変化するというもの。
フォードによれば、これによってアンダーステアを極限まで減らすことが可能だという。”ナチュラルで、限界付近でのハンドリングに優れ、サーキットにおけるオーバーステア・ドリフトもコントールし易い” とも語っている。
グローバル・プロダクト・デベロップメント担当の副社長、ラジャ・ナイールは、このAWDの採用は、2013年の開発初期段階に決定したという。
「どちらの駆動方式を採用するかについては議論があった。しかし、AWDの優位性が明らかになってからは迷うことはなかった。
ツイン・クラッチの採用が、コーナリング・スピードのみならず、ターンイン時の挙動や、コーナー途中の安定性に絶対的に優位だっったからだ。
しかも、この採用によって、ドライバーの運転する愉しみが低減されることはない。運転して愉しく、思った向きにクルマをコントロールでき、しかもラップ・タイムも速い」
エンジンは、2.4ℓ4気筒エコブーストで、これはマスタングに搭載されるものをベースにアップグレードされたもの。より大きなインタークーラーと、ツイン・スクロール・ターボが装備される。
また、口径の大きなエグゾーストも、そのパワー・アップに寄与しているという。パフォーマンスだけでなく、そのサウンドもRSを象徴するようなスポーティなものに調整されている。
実際、AUTOCARのスパイ・フォトグラファーによれば、そのサウンドは非常に逞しいものだったと語っていた。シリンダー・ヘッドはアップグレードされたアロイ製で、ガスケットも強化タイプが採用される。
また、シリンダー・ブロックも高張力のキャスト・ライナーが使用される。ギアボックスは6速マニュアルで、44.2kg-mのトルクにも対処できるキャパシティを持つものがチョイスされた。
ちなみに、第1世代のフォーカスRSは215ps、第2世代のRSは305psだったから、この第3世代のRSは、限定モデルとして登場したRS500の350psを除けば、間違いなく歴代最強のモデルである。
また、この第3世代のフォーカスRSは、フォードのグローバル戦略に基づいて、5ドア・モデルのみの生産となる。
サスペンションは、スプリングとアンチロールバーが固められ、2段階にモード切り替えのできるダンパーが装備される。
また、シャシー全体もセッティングの見直しが行なわれている。電動ステアリングも、フロント・サスペンション・ナックルの変更と、短くされたリンクアームによって接地感がありしかもレスポンスに優れるものとなっている。
タイヤは専用に開発されたセミ・スリックのミシュラン・パイロット・スポーツ・カップ2またはミシュラン・パイロット・スーパースポーツがセットされ、サイズは235/35。
ホイールはスタンダードであってもオプションの軽量鍛造であってもサイズは19インチだ。スタイリングは、エアロダイナミクスを追求したもので、エンジンおよびブレーキのクーリングが最重要視された。
インテリアは、レカロのスポーツ・シート、フラットボトムの本革製ステアリング・ホイール、メタル製ペダルを含めアップグレードされている。また、タッチ・スクリーンには8.0インチのフォードSync2が装備される。
この第3世代のフォーカスRSは、今年の後半に生産が開始され、価格は£30,000(535万円)。ボディ・カラーは、ニトロナス・ブルー、ステルス・グレー、アブソリュート・ブラック、そしてフローズン・ホワイトの4色が用意される。
この写真にあるリキッド・ブルーは、モーターショー専用のペイントだが、オプションのカラーとして用意される可能性もある。
フォーカスRSは全世界で発売が予定されているが、主な売り上げの多くは伝統的なヨーロッパ市場になるのではと予測される。
RS開発マネージャーのタイロン・ジョンソンとの一問一答
開発に着手したのはいつ頃ですか?
「開発の話があったのはかなり前のことでした。ただ、もちろん一台のクルマを作るにはビジネス・ケースも熟慮しなければなりません。最終的にゴーサインが出たのは2013年の終わりの頃でした」
開発上、重要視した点は?
「最高出力を高め、ホイール径を大きくし、エアロを付け足すことは簡単です。ただしわれわれがそんなこと ’だけ’ に興味がないのはご存知のとおりです。これまでのRSと全く異なった次元のRSをつくることに注力しました」
どうして4WDにしたのですか?
「3、4年前のことだったでしょうか。よりトラディショナルな4WDプロトタイプをつくったことがあります。ただしわれわれが満足できるレベルに達していなかったことは事実です。でも今は違います。フォード・フリークが楽しんでくれるに値するシステムが出来あがったことが4WDを採用した最大の理由です」
その時点からプロジェクトの成功までにどれくらいの時間がかかったのでしょうか?
「’とても慌ただしい時間だった’ とだけ、言っておきましょう。技術的な壁を乗り越えることはもちろん大変でしたが、もっと大変だったのはコストとの戦いです。RSは手に入れやすくなくてはならないのですから、なおさらでした」
5ドアの弊害は?
「もちろん3ドアの方が軽いのですが、5ドアになったからといって3ドアに引けを取ることはまったくないのです。楽しさがスポイルされないのならば、便利な方がいいと考えるのは私だけではないはずです」
一般道とサーキットでセッティングを分けた理由は?
「われわれはこの世代のRSに柔軟性も求めているのです。もちろん純粋に楽しめることは ’最低ライン’ であるのですが、世界の情勢は常に進んでいます。1世代あるいは2世代目のフォーカスRSを購入したカスタマーは既に家族をもつ年齢になっています。その方々のことを考えると、家族で快適に移動できながらも、存分に楽しめるクルマをつくりたくなったのです」