如実に短所が表れているのがボディ・コントロールだ。速い速度域では明らかにボディが安定感を失ううえに、横方向にも不意にぐらりと傾くことが多い。

特にRが小さいコーナーを左右に連続して抜ける場合の身のこなしは要改善点。現時点では、308のオーナーがニコニコと笑いながら峠を全開で攻めるというようなシチェーションは想像し難い。

これに対してフォーカスは、すでに高評価をほしいままにしているガソリン版フォーカスSTよりも優れたハンドリングを確保している。これほどに、限界域でも自らが走ることを楽しんでいるようなクルマはあまり見られない。

セアトでは眠くなるような、あるいはプジョーではあたふたとしてしまうようなコーナーでも、フォーカスは確固たる意志のもと、いい意味で大暴れしてくれる。峠道でのテストの間中、’あとはあなたがどれほどアクセルを踏み込めるか次第です’ と、自信満々に語りかけてくれるようだった。

しかしもちろんフォードにも欠点はある。中でもセアトやプジョーよりも締めあげられたサスペンションは、やはり無視できるものではない。さらにウェット路面上でのトラクション不足にも、時に不安感を覚える。

決して不快感を伴ったりすることはなく、明快なボディ・コントロールは他の2台を寄せつけないレベルではあるが、ワゴンであることを考えれば、もう少し衝撃のいなしに気を使ってもいいのではと思った。

乗り心地に関してはセアトがもっとも優れている。予期しない入力が急に生じると4足がばらばらの動きをするかのように狼狽することもあるが、幅広い路面に対する対応力があるのはセアトのみである。

そろそろテストも終わりに近づいてきたが、’どれに家族を乗せて旅にでるか？’ という命題ならば、荷物の積載量も重要になってくる。

平均的なセアトを基準にすると、308のリア・コンパートメントは、はっきりいって破綻している。荷室は広大だが、足元やヘッド・ルームは窮屈であるし、後席の形状も決してリラックスできる類のものではないからだ。

フォーカスの場合はレカロのシートが設置されているため、その厚さの分、後席の足元が制限されている。もちろん前席の環境こそ重要と言うのならばフォーカスのシートがベストだが、こればかりは使用用途によって意見が別れることになるはずだ。

結論

”やれやれ、またフォーカスが一番か……” と、お思いの向きもあるかもしれない。素晴らしいエンジンに優れたシャシーのことを考えれば、確かにそう思うのも無理はない。

家族を乗せて遠出をすることに関しては不足はないうえ、つまらない荷物を放りだして、休日の朝に峠を攻めることもできるとくれば、簡単にフォーカスがトップに踊りだせそうな気さえしてくる。

そのとおりである。AUTOCARの琴線に触れたのは、またしてもフォーカス。ここでは楽しいクルマが正義なのだ。

それよりも、興味深いのはどちらが2位になるのか？である。これに対しては ”MQBプラットフォームをベースした、正しいリア・サスペンションをもったクルマの勝ちでしょう” と思っている読者も多いはず。