ホンダ・グレイスEX

公開 : 2015.03.18 23:40  更新 : 2022.12.12 21:30

  • スポーティなハンドリングと、しっとりしたグレイスな乗り心地。

  • ホンダによると、アジアではセダンのステータス性が健在だという

■どんなクルマ?

2014年の師走に発売となったフィット・ベースのハイブリッド専用小型サルーン。というのは日本市場向けの仮の姿で、その正体はタイ、マレーシア、インド、フィリピン、ベトナム、台湾、中国、ブラジルなどの海外市場を舞台とするシティの4代目である。

80年代の “トールボーイ” とは同名別種で、5年のモデルライフで200万台を、タイ、マレーシア、インドで生産しようという戦略モデルなのである。フィット・ベースという意味では、初代フィットのセダン、フィット・アリアがタイから輸入されて日本でも一時発売されていたけれど、あの系統に連なる。もっとも、日本向けのグレイスは13年に稼働開始した埼玉の寄居工場でつくられるメイド・イン・ジャパンである。

ボディ・サイズは全長4440×全幅1695×全高1475mmと、いわゆる5ナンバーにおさまる。フィット比70mmプラスの2600mmのホイールベースは、トヨタカローラ・アクシオと同寸法である。ごくひらったくいえば、ホンダ版カローラ・ハイブリッド、ということになる。

パワートレインは、フィット・ハイブリッドと同じ1.5ℓ直4+電気モーターと7速DCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)の組み合わせからなる。システム出力は137ps、燃費はJC08モード34.4km/ℓ(EXは31.4km/ℓ)で、ハイブリッド・セダンNo.1を高らかにうたう。カローラ・アクシオ・ハイブリッドは同モード33.0km/ℓ、システム出力は100ps。後だしが有利なことはいつの世も当然である。

グレードはDX、LX、EXと3種類ある。価格は195万円から、と170万円弱から始まるフィット・ハイブリッドより、トランクのある分、高価になっている。月販目標は3000台。

■どんな感じ?

フィットと同じプラットフォームではあるけれど、70mm延びたホイールベースと重くなった車重がいい方向に効いている。とってもしっとりしていて、いい感じなのだ。

秘密の一端は、リア・サスペンションの取り付けに “液封コンプライアンス・ブッシュ” を採用していることにある。これが大きな入力を遮断し、乗り心地とN(騒音)V(振動)面で効果を発揮するという。担当エンジニア氏によれば、「セダンの価値をどこで出すか?」と悩んだ末に思い切って採用した由。1円、2円のコストダウンをしているなか、1コイン、つまり、500円よけいにかかる高価な部品を採用した。かけるべきところにはドド〜ンとコストをかける決断が必要なのである。

記事に関わった人々

  • 今尾直樹

    Naoki Imao

    1960年岐阜県生まれ。幼少時、ウチにあったダイハツ・ミゼットのキャビンの真ん中、エンジンの上に跨って乗るのが好きだった。通った小学校の校長室には織田信長の肖像画が飾ってあった。信長はカッコいいと思った。小学5年生の秋の社会見学でトヨタの工場に行って、トヨタ車がいっぱい載っている下敷きをもらってうれしかった。工場のなかはガッチャンガッチャン、騒音と金属の匂いに満ちていて、自動車絶望工場だとは思わなかったけれど、たいへんだなぁ、とは思った。

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