アストン・マーティンはバルカン専用のチームを準備
公開 : 2015.03.17 22:50 更新 : 2017.06.01 02:10
アストン・マーティンはイングランド中部のウォリックシャーに、£1,800,000(3億3000万円)のハイパーカー、バルカンのための特別チームを設立したと発表した。
24台のみの製造が予定されるファクトリーは、アストン・マーティンが拠点を置くゲイドン近くのウェルズボーンに建てられる予定であることが報告されている。
それぞれのパーツはアストン内製のものか、専門家から買い取ることになっており、そのどれもがレースを中心とするサプライヤーになるようだ。
選りすぐりのエンジニア達は今年の夏の終わりくらいから組み立てを始めることになっており、第1号車のデリバリーは今年末になる見込みだ。
プロジェクトのチーフ、デイビッド・キング氏いわく ”すべてのセットアップはサーキットに特化したものにする” とのこと。
バルカンが製品化されれば、英国からのハイパーカー・マーケットの参入は初となる。
バルカンというモデル名は、アストン・マーティンの本部が、RAF(英国王立空軍)のベースのあるゲイドンに位置するということで、1950年代から1970年代に活躍した英国製の有名な戦略爆撃機の名前が由来している。
デザイン部門チーフのマレック・ライヒマンは ”2016年から続々とデビューする予定の新しいアストン・マーティンのスポーツカーおよびGTカーのデザイン・プレビューでもある” と語る。
エクステリア・デザイナーのチーフにはマイルス・ニューンベルガー、インテリア・デザイナーのチーフにはマット・ヒル、そして開発ドライバーにはアストン・マーティン・レーシング(AMR)のダレン・ターナーが招集されている。
バルカンのコアは、One-77に使われたカーボンファイバー製のタブだ。しかし、より剛性を上げられ、そして軽量化され、しかもFIAスペックのロール・ケージを備えるなど、50%は新設計のもの。そのシャシーとボディの開発は、One-77同様マルチマティックで行われた。
エンジンはフロント・ミドシップ・マウントで、その50%はコクピットに達しているという。そのパワーは811psを発揮する7.0ℓプラスのV12で、駆動方式はRWD。トランスミッションはヴァンテージGTEレーサーと同じ6速のXトラック・シーケンシャルが採用される。
2本のチタン製のエグゾーストを備え、ライヒマンによれば “シフト・ダウンの度に炎とサウンドが奏でられる” という。
最高速度は322km/h以上であると予測される。
このバルカンには、敢えてノーマル・アスピレーションのV12が搭載されることになった。
このことからも次世代のアストン・マーティンのプロダクション・モデルにはV12がラインナップに残ることは確実だが、バルカンのようにノーマル・アスピレーションではなくターボ・ユニットになる可能性は高い。
サスペンションはプッシュロッド・タイプ。ダンパーは当然アジャスタブルで、アンチロールバーを備える。
ブレーキはブレンボ製のカーボン・セラミックで、フロントがφ380、リアがφ360。ポッシュ製のアジャスタブル・アンチロック・ブレーキ・システムを装備する。
この他、バリアブル・トラクション・コントロール、リミテッド・スリップ・デフ、カーボンファイバー製のプロペラ・シャフトとマグネシウム製のトルク・チューブ、軽量なマグネシウム製の19インチのアロイ・ホイール、そして345/30サイズの専用のミシュラン・タイヤなどが装備される。
ライヒマンはバルカンについて “感動的なドライビング・エクスペリエスを与えてくれる” としている。非常に一体感のあるクルマであり、常にコントールしていることが感じられるクルマでもあるという。
バルカンのホイールベースはOne-77と同じ2800mm。全幅はOne-77よりも200mm広い2200mmというサイズだ。高さは100mmほど低い1200mmで、ボディ重量は150kgほど軽い1350kgという数値だ。
ライヒマンが語ったところによれば、このバルカンはアストン・マーティンの “力、美しさ、そして魂” の最終的な具現化であるという。また、そのフロント・エンド・デザインについては、アストン・マーティンの将来的なモデルのデザインを示唆しているという。
”これは、われわれの来るべきスポーツカーに大きな影響を持つモデルである” とライヒマンはコメントしている。インテリアは、アルカンタラ、本革、カーボンファイバー、アルミニウム、チタンなどすべての素材が使われ、一部はあえてカーボンファイバーをむき出しにしているという。
また、ドライビング・ポジションはダレン・ターナーとの共同で開発され、ロールケージは視界を良くするためにAピラーによって隠されるデザインとしている。
また、彼はポリカーボネート・ウインドーとスクリーンを通して見える視界確保のためにミラーの位置の微調整も行っている。ステアリング・ホイールは、ディスプレイの情報を遮らないようにトップ・セクションを欠いたデザインだ。
アストン・マーティンは、このバルカンをレースに使用する人のために、あえてペイントしていないカーボンファイバーのままのボディでもデリバリーをする予定だという。
バルカンには、ワイパーやハンドブレーキなども取り付けられているが、サーキット専用モデルであり、FIAの安全基準を満たすクルマの作りがされている。アストン・マーティン自身は、ロード・モデルとしてデビューさせる計画はないという。
また、このバルカンを24台の限定とした理由は、ひとつはル・マン24時間レースを捩ったもので、もうひとつはジェームズ・ボンドの映画が今回封切りされるスペクトラで24作目となることだという。
まだ、その販売を発表したわけではないが、すでに数人顧客からオーダーが入っているとも言う。
ちなみにバルカンのライバルにあたるのは、マクラーレンP1 GTR、そしてラ フェラーリFXX Kだ。
バルカンのオーナーには、マクラーレンP1 GTR同様に、完全な技術的な支援と、専用のサーキット・プログラムが提供される予定だ。
また、V12ヴァンテージSやOne-77、ヴァンテージGT4レーサーを含むアストン・モデルを使用したトラックデーに参加できる権利も与えられる。
バンベリーにあるレース・シミュレーション・カンパニーのベース・パフォーマンス・シミュレーターで運転のトレーニングを受けることも可能だ。
ダレン・ターナーを始めとするプロ・レーサーの手ほどきを受けることも可能で、様々な電制リミットの制御やタイヤなどを試しながら腕を磨くこともできる。
バルカン専用のトラックデーの開催も予定しているとのことで、それぞれのドライバーにあったテクニカル・サポートも充実させる方針だという。