マクラーレンP1 GTR

公開 : 2015.03.18 23:50  更新 : 2017.05.29 19:10

この時点でハッとするのがP1の優れたトラクション・システム。普通に考えるだけでもおぞましいパワーであるにも関わらず、タイヤは路面を掴んで離さない。

P1の場合、合法的なエクステリアゆえに速度が増していけばいくほど、体感的にもその速度感が伝わってきていたが、GTRの場合、乗り味にいい意味で ’必死さ’ がない。桁外れのエアロダイナミクスゆえ、気づけばおぞましい速度に達していることが多いのだ。

したがってあらゆる速度域で気持ちの余裕さえある。時計を見ながら、考え事をすることもできるのだ。アンダーステアやオーバーステアも皆無。タイヤを一瞬にして溶かしながら左右に滑りまわることもない。

思い通りに美しくに曲がるのみ。クルマのTVゲームをしているような気持ちになってくる。ナンバープレートがついた兄弟に比べて、つねに冷静沈着な ’兵器’ なのである。

すでにかなりの速度で攻めているつもりだったが、あまりにもクールすぎるので、さらに攻め込む。そうすればようやくP1 GTRのルックスに見合った荒ぶり方をし始めるのである。

走行会に毛が生えた程度の向き合い方では、P1 GTRは頭角の ’と’ の字も表してくれないのだ。クルマの能力が桁外れに高いと、こうも見透かされたような気持ちになるのだ。生まれてはじめての経験である。

”本当に自分は運転する資格があるのだろうか?” と常に問いたださなければならないクルマなのだ。チーフ・エンジニアのダン・ パリー・ウィリアムズ氏さえ初めて乗った時には息をし忘れたという話が唯一の救いだった。

少しショックを受けたため休憩をしたのちにセカンド・ラウンドへ。今度は、これまでにも増して攻めたててみる。ようやくP1 GTRもこちらに振り向いてくれたようで、少しずつ息が合いはじめる。

この時には既に陶酔したような気持ちになっている。ステアリングやペダル、シート底面から与えてくれる情報量の多さに溺れてしまいそうな気持ちになる。さらに、とてつもなく深い懐に全力で飛び込んでいく。

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