BMW M135i
公開 : 2015.03.19 23:50 更新 : 2017.05.23 10:26
なめらかな回転感とエンジンが奏でるハーモニーは一度味わうとやみつきになってしまう。3速1000rpmでのぼり坂を駆け上がる余裕もあるし、もちろんレッド・ゾーンまで痛快に回すことも可能だ。
0-100km/hタイムはATが4.9秒、MTが5.1秒。テスト車はMTを組み合わせていたが、この0.2秒の差を甘受してでもMTを選ぶことをおすすめする。それくらいに、ストンと気持よくギアを吸い込んでくれる。
ペダル配置もヒール・アンド・トゥをするには絶妙であり、むやみに膝を浮かばせて踵をガス・ペダルに合わせるといった、無駄な動作が省けるおかげでドライビングに集中できる。
特にポルトガルの曲がりくねった峠道では、シートやステアリング、シフト・ノブ、ペダルの配置がしっくりとくることのありがたみを感じた。
コーナー手前ぎりぎりまで我慢してブレーキを踏み込むと、自分の期待する分量とぴったりの制動力がもたらされる。そこからそっとブレーキを離し、転舵を試みれば鼻先がスッとエイペックスに向き、コーナー終盤までじっと路面を掴んでいてくれる。
さらにRが大きくなると、ボディが落ち着くまでにリーンする傾向が出はじめ、これを極めて予想しやすいエンジン・マップを利用してアクセル・ペダルで調整。頼りになるトラクションを最大限に引き出してやれば、上手なコーナリングの一丁上がりである。
これほど自分の思い通りに車体を動かせると、何度だって繰り返したくなるもの。現に筆者も、時間の許すかぎりUターンしてはコーナーを攻めて、またUターンしてと、心から楽しませてもらった。
1点惜しいのは可変レシオ・ステアリング。基準車よりもピリ辛な仕立てになっていることはよく分かるが、やや軽すぎるうえ、初期レスポンスが敏感すぎるきらいがある。フィードバックの絶対量をもう少し増やしてくれれば、さらなるレベルの楽しさを味わえるはずだ。
また、ミドル・コーナーの中腹で、片方の車輪がバンプを踏むと、ステアリングがぐらりとブレて、車体がタイヤ1個分横方向に振られる傾向がある。この挙動には不安になることがあった。
アダプティブ・ダンパーを搭載したモデルは、上記のように車体が狼狽するようなことは見受けられなかった。ただしこちらも、高速コーナリング時に大きい窪みを踏むと、車体がバウンドする傾向が見られたため、それ以外が楽しいだけに改善を望みたいところである。