メルセデス・ベンツF015
公開 : 2015.03.21 23:50 更新 : 2017.05.13 12:50
ドライバー自らが運転を行っている場合は、フロント・グリルの中に収められたLEDランプが白く輝き、それを周囲に知らせる。一方、自律運転をしている場合は、非常に礼儀正しい作法をみせる。例えば、歩行者がゼブラ・ゾーンで道を渡ろうとしている場合、クルマのスピーカーから “どうぞお先に” というアナウンスが流れるといった具合だ。
自律運転をするクルマなどかなり先のことと思われるかもしれない。確かにF015は、コンセプト・モデルであり、すぐにプロダクション化されるものではない。しかし、それが現実のものとなるのはそう遠い話ではないようだ。
ちなみに、F015のボディはカーボンファイバーと強化プラスティック、そしてアルミニウムの組み合わせによって形成される。関係筋は、この技術も将来のメルセデスの生産技術を示唆するものだという。ボディ自体の重量は、現行のアルミニウムと高張力鋼板を使ったものに較べて40%ほど軽量で、しかもボディ剛性は高いという。
このF105はコンセプト・モデルであるが、すでに実働するモデルである。アメリカでは4つの州でこのような実験的車両を公道上で走らせることを許可されるが、そのうちの1つ、カリフォルニア州で合法的に実際に走っている。
自律運転のキーとなる情報は、絶えずセンサーとステレオ・カメラから得る周囲の状況だ。すでにCクラスでは、スタート・ストップやオート・パーキングが実現されているが、それを更に進化させたものである。F105が、Cクラスと異なるのは、ハードウェアとソフトウェアが一体となって開発されているということだ。人間が予想できないような状況でも、瞬時に人工知能が判断を下す。
ドライブトレーンは、水素エンジンで、そこで発生された電気を使ってモーターを動かすというもの。また、電力は水素エンジンのみで発生するものではなく、プラグインで充電も可能。航続距離は、1100kmで、水素エンジンのみの場合は900kmとなる。リチウム・イオン・バッテリーに蓄えた電池だけでも200kmの走行が可能だ。2つのモーターのパワー、トルクは272ps、40.6kg-mで、0-100km/h加速6.7秒、トップスピード200km/hというパフォーマンスを発揮する。なお、水素タンクはフロアの下に収納される。
F015は、将来のテクノロジーといえる自律運転のスタート・ラインに立ったモデルである。これから、そのメリットが討議され、そして現実的なものになっていくという段階にある。しかし、ひとつだけ覚えておいて欲しいのは、メルセデスがドライバーから運転を奪い去ってしまおうとは考えておらず、自ら運転するという “愉しみ” を残していこうと考えているということだ。
(マーク・ティショー)