またこれらの欠点は決して ’慣れ’ で克服できる類ではない。たしかにマニュアル・モードに切り替えれば、気にならなくはなるものの、SUVを常にマニュアル・モードで運転する気にはどうもなれそうにない。

これに対して、エンジンの回転フィールは(音や振動は置いておいて)別け隔てなく均質なもの。また制動力にも不満はなく、踏力に対する反応も従順。とても扱いやすい仕立てであると感じた。

高速道路の速い速度域に達しても、硬めのサスペンションに不快に思うことはない。車体はぴたりと落ち着いたまま巡航でき、室内の遮音性がたかいおかげで長距離でも疲れることはない。荷室の広大さも加点ポイントだ。

キャビンの質感はまずまずではあるが、いかにもプラスティックらしいパーツが多いのも事実。機能的でロジカルではあるが、エレガント、あるいは気持ちを高めてくれるといった類のものではない。

また、パノラミック・ルーフがもう少し前方まで開いてくれたら、最前列のパッセンジャーも開放感に浸れるのではないだろうかと感じた。

地形を忠実になぞりながらもボディを動かさないディスカバリー・スポーツに対し、BMWのサスペンションは(意外にも)ボディを動かす仕立てである。

だからといって高速巡航時に不快な上下移動は皆無なのはBMWの優れたところで、当たりは柔らか。ステアリングは軽めのセットとなり、柔和なフィールをもたらしている。

テスト車両には£650(12万円)の可変ダンパー・コントロールが備わっており、必要に応じてサスペンションを引き締めることも可能。ただしその際も、ディスカバリー・スポーツほどの硬質さは看取されなかった。

きっと多くの人はX3に ’取っつきやすい’ 印象を抱くに違いない。これにはロック・トゥ・ロック2.4回転と比較的クイックなディスカバリーに対し、X3は3.0回転を採用したことも少なからず影響しているはずだ。

スポーツ・モードにセットすると、今までとは一転してX3の所作は一段階引き締まる。この結果、ディスカバリーよりも速くコーナーをこなすことができるが、かといって特に賞賛に値するものではない。

どちらが興奮するか？という観点ではディスカバリーの方が勝るのだ。しかし、2.0ℓディーゼルが191psを発揮するという面ではほぼ互角ではあるが、最大トルクはは40.7kg-mとディスカバリーよりも小さいながら、低回転域の ’押し出し感’ はX3の方が強く感じられた。

このように活発さを引き立たせるのは8速オートマティック・ギアボックスによるところが大きいようだ。ディスカバリーほど頻繁にダウン・シフトをしないものの、低速域では比較的エンジンを上まで引っ張ったうえで変速する傾向にある。

X3が搭載するエンジンも際立って洗練されているわけではないが、外から聞くと、ディスカバリー・スポーツのそれほど騒がしくはない。