ホンダS660

公開 : 2015.03.26 23:50  更新 : 2017.05.29 19:09

■どんな感じ?

S660のスタイリングは、コンセプト・モデルから大きな変更はない。薄いヘッドライトや左右を繋ぐフロント・グリル、フロント・フェンダーに設けられた特徴的なアウトレットのデザインなどは、ほぼS660コンセプトのままだ。

市販モデルでもっとも特徴的なのは、やはり脱着式のソフトトップを採用したこと。”ロールトップ” と名付けられたこの装備は、トップを外したあとはクルクルと巻いて畳み、フロントフード下に設けられたユーティリティ・ボックス内に収納することができる。

折りたたみ式のソフトトップや、電動トップに比べると開閉に関する手順は増えるけれど、それほど手間という印象はない。むしろセキュリティ面や、複雑な開閉機構を備えることで車体重量が増えることを考えれば最適な判断といえるだろう。なお、このロールトップをスムーズに収納するために、フロント・フードには左右にダンパーが備わるなどの配慮がなされている。

指先で引っ張るタイプのドア・ノブに手をかけ、運転席に潜り込むと着座位置の低さに驚かされる。大げさでなく、ボディのテッパン1枚下にはすぐ地面があるような印象だ。ステアリングは35センチ径のDシェイプ形状。スポークのあいだからは大型の回転計を見ることができ、その中央には速度がデジタル表示される。

ステアリング・コラムの右、インパネ前面に配されたスタート・スイッチを押すと背後のS07Aユニットが目を覚ます。エンジン・サウンドそのものには特別な演出は感じられないが、背後から聞こえてくるメカニカル・サウンドはやはりドライバーの気持ちを昂らせる。

ステアリングから左手を自然に降ろした場所にあるシフト・レバーは、αでは皮巻きタイプを採用。どこかで感じた手触り……と思ったら、S2000後期型(AP2)の純正品だそう。かつてのビートは、センターミラーにNSXのものを使用していたが、このS660でも同じような演出がなされている。ホンダ・ファンにとっては嬉しいポイントだろう。

今回の試乗コースは、主に二輪が走るサーキットということもあってスピード・レンジはそれこそ高くない。7700rpmを許容する6MTモデルであれば、3〜4速までで走りきれてしまうレイアウトである。とはいえ前述の低い着座位置や小径ステアリング、そして極めて高いボディ剛性などにより生み出されるハンドリングは痛快そのもの。ステアリングをコブシひとつぶん動かせば、ノーズは軽やかに向きを変える。

やがてペースをあげていくと、活発なエンジン・サウンドとエキゾーストノートが混じり合ったサウンドが背後から聞こえてきて、がぜんテンションが高まってくる。最高出力は64psと軽自動車の自主規制枠に納まっているため、絶対的なパワーやトルクに驚きはないものの、ピックアップの鋭さには驚かされる、車両重量はM/Tモデルで830kgと決して軽量ではないけれど、右足の動きに瞬時に反応し、クルマがぐいぐいと前に進んで行く。いかなる状況でもリア・タイヤにトラクションがかかっている感じは、45:55という前後重量配分によるところも大きいだろう。

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