ルノー・メガーヌR.S.275トロフィー-R
公開 : 2015.04.17 23:50 更新 : 2021.03.05 21:35
■乗り心地とハンドリング
”サスペンションのセットアップは、あなたが望む望まないに関係なく、とかく速いペースを要求してくる。” ― ニック・カケット(ロードテスター)
’思ったより取っつきやすい’ というと不思議に思われるかもしれないが、これが筆者の得た感想だ。
ただ誤解を招かぬよう理っておくが、トロフィー-Rの乗り心地がノーマルのメガーヌRSを同じであるとか、九十九折でも安楽などというのとはちょっと違う。
乗り心地は極悪ではないが、サスペンションは確かに硬いし、サイドウォールだって尋常でないほど張り詰めている。それに薄い。
ホイール・トラベルは極めてショートだし、シャープな凹凸を踏めばドスンと衝撃を伝えてくる。要するに、路面の状況がフルで伝わってくるのだ。
多くのライバルは、もっと器用なクルマづくりをしているはずだ。
ただし、トロフィー-Rほど没頭でき、そして陶酔しそうになるくらいに鮮やかなスリルを提供してくれるクルマは他にない。
そんなハードコアな資質が輝くのは、他でもなくサーキットのうえだ。常軌を逸したグリップ・レベルとバランスは、計り知れないほどの自信と野心を膨らませてくれる。
コーナー手前で、精密なステアリングを切り込み、中腹では意図と寸分の狂いなく軌道を整えられる。これほどコントローラブルなFF車が他にあるだろうか? ましてやハッチバック・モデルである。スーパーカーに比肩するレベルにあるといっても決して言い過ぎではない。
特に粘りづよさは、ロータスをも、いやポルシェをも怖気づかせるレベルにある。それゆえに慣れるまでにしばらく時間がかかるほどだ。ウエット路面の上では、カップ・タイヤがグリップを得るためにもがき苦しむことになるが、シャシー・バランスに起因するコントロールのしやすさゆえに必要以上に恐れることはない。
制動時のスタビリティは ’超’ 優秀。制動力のたかさのおかげで、場合によってはわずかなブレーキングのみでもボディの向きを変えてやることだってできる。
優れた操舵特性とコーナリング・バランスゆえ、コーナー脱出時のベクトルを早めに定めてやる必要があるが、とにもかくにも、かなりハードな運転にも苦しい顔ひとつ見せないFF車は、ほかになかなか見つけられない。