ゼノスE10 S vs ケータハム・セブン360R
公開 : 2015.04.13 23:50 更新 : 2017.05.29 19:32
また、ケータハムには欠点がないわけではない。足元のスペースは非常に限られているし、キャビンも同様だ。もし仮に、右肘をもっと自由に動かしたいならば横の ’バリア’ を取っ払うという手もあるが、残忍なまでの風の巻き込みは覚悟しなければならない。
さらに急に雨が降った時のために雨具は必須だし、ルーフだけがオープンになるE10と違い、目が乾くのを防ぐ必要もある。これらをすべて耐え抜けば、心から楽しい気分になれるのだ。
セブンはそもそもモータースポーツ界で活躍するために、コーリン・チャップマンによって作られたクルマである。E10の方が快適に移動できるのは、当然といえば当然なのかもしれない。
とはいうものの、サーキット上でE10がまったく使い物にならないというわけではない。
E10はリアにオープン・ディファレンシャルが組み込まれているが、LSDやサーキット用のスプリング/ダンパーはオプション扱いとなる。
ブランティングソープではサーキット用と公道用のサスペンション・セットアップを試したが、サスペンションの交換自体はものの30分程度で完了する。ちなみにアップレート版サスペンションの価格は£795(14万円)。
サーキット用のセットアップを謳うだけに、ボディの不用意な動きは最小限に抑えられている。したがってコントロールもしやすい。サーキット走行をメインにするならば価値ある選択肢だといえる。
ギリギリまでブレーキングを我慢してコーナーに飛ぶ込み、しかるべきタイミングで強めにアクセルを踏み込めば、車体後方からタイヤの溶ける匂いがうっすらとしてくる。
手中でビー玉を転がすように、するすると滑らせながらステアしてやると、そこからさらに角度をつけることも可能だし、ニュートラル状態に戻すことも、同じように簡単にできる。
まさに短く、幅広の、エンジンを中央の比較的高い部分に置いたクルマの良点である。スリリングとはかけ離れたところにあるが、’自分が’ 操っている感覚が非常に強いのだ。
これに比べて360Rは、いい意味で自由奔放な印象。古典的なレースカーさながらのロールの抑制や、デリケートさが前面にでているのだが、それをスリルと捉え、次の挙動に耳を澄ませながらひた走るタイプである。
ならばE10よりも楽しいか? しかしこればかりは時と場合による。ならば今回のテストの勝者になりうるか? 必ずしもそうとは限らない。というのが本音である。
結論
今回のテストを通して、ゼノスという今や稀なおもしろいクルマが出現したことと、ケータハム・セブンのスポーツカーとしての、たかい熟達度が明らかになった。
ゼノスE10は構想からたった2年しか経っていないが、それを感じさせないほどの、ポテンシャルの高さが取り柄である。したがって、ゼノスE10を ’高潔なスポーツカー’ と表現することに迷いはまったくない。
ゼノスは早いペースで完成度を高めているという意味で年月を感じさせない。360Rは長い年月を経ているにも関わらず、まったくフレッシュさが薄れておらず、むしろどんどん若返っているという意味で年月を感じさせない。
(マット・プライヤー)
ゼノスE10 S
最高速度 | 233km/h |
0-100km/h加速 | 4.0秒 |
燃費 | NA |
CO2排出量 | NA |
乾燥重量 | 700kg |
エンジン | 直列4気筒1999ccターボ |
最高出力 | 254ps/7000rpm |
最大トルク | 40.8kg-m/2500rpm |
ギアボックス | 6速マニュアル |
ケータハム・セブン360R
最高速度 | 130km/h |
0-100km/h加速 | 4.8秒 |
燃費 | NA |
CO2排出量 | NA |
乾燥重量 | 560kg |
エンジン | 直列4気筒1999cc |
最高出力 | 183ps/7300rpm |
最大トルク | 19.8kg-m/6100rpm |
ギアボックス | 5速マニュアル |
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