BMWのシャシー担当のジョズ・バン・アスは「われわれはライバルがするようなロール・アングルだけを基準にすることはしなかった。というのも、コーナリングに入る時点での縦方向に対するアクセラレーションをも加味しなければならないならないと考えたからだ。ロールバーを油圧から機械式に変更したことで反応が素早くなったことにより、傾きに関してよりプログレッシブな動きをすることが可能になった。」と語っている。

はっきりとしたサスペンション・セッティングの変更を反映して、サスペンション・セッティングも4つのモードが選べるようになった。コンフォート・プラス、コンフォート、スポーツ、アダプティブの4つである。特に、コンフォート・プラス・モードは7シリーズにとっては新しいモードで、全般的に固めの乗り心地であった現行モデルから脱却を感じさせるものである。

新しい7シリーズには、ホイール・キャリパー、ブレーキ・キャリパー・ハウジング、ブレキー・ディスク・キャリア、そしてリアのトランスバース・サスペンション・アームなど多くのアルミニウム・コンポーネンツが使用されている。それらによって40kgが軽量化され、更にバネ下はそれぞれ10kgの軽量化がされたという。また、前後の重量配分も50:50という理想的な数値となっている。

旧いバリアブル・レシオのラックの代わりに固定式のレシオとなった電動アシストの機械式ステアリングは、サスペンションとも関連性を持つ。更に、リアには街中では最大3°の逆位相を、そしてオープン・ロードでは最大2°の同位相となるリア・ホイール・ステア機構も組み込まれている。

ミラマのテスト・コースで行われた試乗では、スポーツ・モードにおいて現行モデルよりも遥かにそのハンドリングが素晴らしくアップグレードされていることが確認できた。ステアリング自体は以前よりも軽くなっているが、センター付近を一旦離れれるとその精度は高くなり、一貫した動きを見せる。リア・ホイール・ステアもコーナーでの機敏な動きを大いに助けているようだ。その結果、新しい7シリーズは、最高の路面の追従性を見せてくれることとなる。また、そのグリップ・レベルも高いものであった。新しいボディ・ストラクチャーの高い剛性も、ダイナミックな動きを助長してくれるものであった。

ところが、一転してコンフォート・プラス・モードにすると、ガラリと性格を代え、非常にリラックスできるしなやかな乗り心地を提供してくれる。現行モデルにある明らかな固さは影を潜め、柔らかなスプリングがもたらす改善された快適さを与えてくれたのだ。

■「買い」か?

プロトタイプでさえ、新しい7シリーズが現行モデルよりも幅広いダイナミック能力を持つことは明白だ。その最終的な煮詰めにはあと2ヶ月ほどの猶予があるがその完成度は高い。

技術的にも、カーボンファイバー・コンストラクションと、ジェスチャー・コントロールなどといった贅沢なものを採用した特徴がある。

しかし、最も重要なことは現行7シリーズの持つハンドリングの良さといった魅力を損なうどころか更にアップさせつつも、快適さが大幅に改善されたことにある。今度のBMW 7シリーズは、間違いなくメルセデス・べンツSクラスの有力な対抗馬となるに違いない。