アウディTT
公開 : 2015.04.23 23:40 更新 : 2017.05.29 18:14
■乗り心地とハンドリング
”基本的なハンドリング・バランスは良好。もっさりしていないロック・トゥ・ロック2回転のステアリングと乾燥重量が明らかなアドバンテージとなっている” ― マット・プライヤー(ロードテストエディター)
アウディのブランド・ストラテジーに対する盛んな(そしてちょっと過剰な)賞賛を聞くたびに、フラストレーションに似た感覚を覚えるのは、なにも筆者だけではないはずだ。
正直言って、アウディの多くはアンダーステア傾向に振っており運転していて面白くないし、さらに一貫性に欠けるステア特性をやすやすと見過ごすことはできない。多くのアウディ信奉者は気にもしないだろうが……。
しかしながら、アウディはこれまでの考え方を変えようとしているようだから、まったく希望がないわけではない。
特にTTはMQBプラットフォームを採用したことにより、乾燥重量が1320kgに抑えられた点は、明確にアジリティにつながっているはずだ。
テスト車両は235/35 R19のタイヤを履いていたため、低速域の乗り心地の悪さは読者諸兄のご想像のとおり。決して不安定というわけではないのだが、毎日の使用を望むオーナーにとっては冷徹な仕打ちにも思える。(あるいはこれを ’スポーティ’ と勘違いするか)
ただしハンコック製タイヤ単体でみていくと、ダンピング、グリップ、トラクションは必要にして十分といったところ。
磁気粘性ダンパー(オプション)、エンジン、ギアボックス、ステアリングの重み、ESCの介入度合いを個別に選べるのは現行ならではの仕掛けであり、自分で好きなようにセットアップの組み合わせを変えることも可能だ。
単なるマーケティング本位のギミックではない点も良い。おそらくほとんどのシチュエーションでオート・モードに固定しっぱなしになることが想像できる一方で、ダイナミックにセットするだけの価値も十分に見いだせる。
反面、ステアリングは軽めであり、正確性とキャラクターはお世辞にも最高レベルとは言いがたい。市街地での軽さ、高速域での重み、高速道路上での堅実さの両立に躍起になっていることが感じられるが、’あの’ アウディがハンドリングに関して努力しているというだけでも実は喜ばしいことなのかもしれない。
速度が速くなれば、車体はピタッと安定し始める。この際のハンドリングは多くのスポーツ・クーペと同等のレベルに達しており、多くのドライバーが ’ダイナミック’ と表現したくなるようなレベルにはある。
大事なのは、どの速度域にも相応しいハンドリング・バランスの組み立てなのだが。