アウディTT

公開 : 2015.04.23 23:40  更新 : 2017.05.29 18:14

■経済性とランニング・コスト

”17.0km/ℓという2.0ℓ TFSIの公表値には及ばなかったが、われわれの高速道路上のテストでは12.3km/ℓをマークした” ― ヴィッキー・パロット(ロードテスト編集補佐)

ポルシェ・ケイマントヨタ86のことは置いておいて、BMW Z4メルセデス・ベンツSLKプジョーRCZなどのライバルを尻目に、TTは常に優れた評価を積み重ねてきた。

大きな理由として挙げられるのが、スポーティな出で立ちに反して、燃料消費率がいいからだろう。そして今回からは、さらにディーゼル・モデルを投入することにより、その評価はより確実なものとなっている。

£32,000(577万円)をわずかに上回る価格からスタートする2.0 TFSI Sラインは、高級志向のホットハッチの領域に足を踏み込む程度であり、クーペ・スタイルでありながらあまり激しくない車を求める層にとっては確実に喜ばれるはずだ。

さらにBMW 228iやミニ・ペースマン・オール4JCWに比べて3年後の価格が下がりにくいという傾向もあるうえ、17.0km/ℓの燃費や137g/kmというCO2エミッションは3ドアのゴルフGTIよりもわずかだが優れている。

高速道路上でのAUTOCARのテストでは12.3km/ℓをクリア。200psを上回るガソリン・エンジンの3ドアシャとしては極めて優れた数値ではないだろうか。

一方のディーゼル・モデルならば23.8km/ℓもの数値をマークするとのことで、110g/kmのCO2排出量や燃料台、税金を考えれば圧倒的な強みであるといえる。

しかしながら、可変ダンパーがSラインのみにしか付かないというのであれば別の話ではあるが、Sラインをわざわざ選ぶ気にはならない。というのも、Sラインならではのオリジナリティが希薄だからだ。

またTT Sを購入するには、基準車のTT以上に長く待たなければならないという現実も辛い。しかしTT Sにはわれわれの大好きなフォルクスワーゲン・ゴルフRとシェアするメカニカル部品が多いため、悩ましい選択であることには変わりない。

■「買い」か?

”最後にいえること。TTが戦うべく唯一の相手は、TT自身のルックスである” ― スティーブ・クロプリー (英国本誌編集長)

Good:オリジナリティ溢れるルックス、突出した質感、日常域の力強さ
Bad:深みに欠けるハンドリング、低速域の乗り心地、非直感的なメーター・ディスプレイ

アウディTTに1つ求めるとしたら、その伝統(もう伝統といっても差し支えないだろう)に恥じぬ完成度であって欲しいという点だ。

内外装を見るかぎり、伝統にぴったりとマッチした出来栄えであることがわかる。特にインテリアは、ほとんど完璧といっていいほどの作り込みである。

新しいストラクチャーや効率的なパワートレインも同様だ。

しかし、これまでTTがクラスを牽引する存在になれなかったのは、やはりなんといっても動力性能がユーザーを満足させられなかったからだろう。

起源を同じくするフォルクスワーゲン・ゴルフアウディA3といった優れたクルマたちに ’似すぎている’ というのがかえって裏目に出てしまったのかもしれない。

ただし現行のTTはちがう。これまでよりも素早く、そして調整しやすく、常にハツラツとしているのだ。自信をもってそう断言できる。

では同価格帯のホットハッチに比べてどうだろうか? こればかりは無条件には首を縦に振れない。

しかしこれだけは言える。今回のTTは、これまでのアウディ製クーペのなかで、もっとも前途有望なモデルであるということを。


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