ジャガーXE
公開 : 2015.04.24 23:50 更新 : 2017.05.29 18:38
■どんな感じ?
今回われわれは、ディーゼルの高出力版にアクティブ・ダンパー(コンフォート/スポーツ/アクティブの3モード)を組み合わせたモデルのMT/ATの両方を試した。
まず第一に驚いたのがディーゼル・エンジンの完成度の高さだ。今年1月にテストしたプロトタイプでは、インゲニウム・エンジンがいかにも機械らしいノイズを発していたのだが、今やその気配はまったくない。
BMW 320dのディーゼル・ユニットほどの静けさではないが、伝わってくる感触は常になめらか。プロトタイプのエンジンとは別物ではないかと思えるほど、徹底して洗練されている。
とくにZF製のMTよりもATの方が相性がいいらしく、(インストレーションや消音材のスペースの影響かも知れないが)、XEの搭載するATとディーゼルの組み合わせは高い競争力をもつことになるだろう。
ディーゼル自体は1500rpmまでは比較的フラットだが、1750rpmからはモリモリとトルクを与えてくれる。そこから4000rpmまでは極めて快活に回ってくれ、その際にも耳障りなノイズは聞こえてこない。
したがって、高速道路の速度域でも、鼻先にディーゼル・エンジンを搭載していることに気づかないほど。むしろドア・ミラー起因のウインド・ノイズや、ロード・ノイズの方が気になるくらいであった。
マニュアル・シフトの操作感も気持ちがいい。いやにぐにゃりとしていないし、ノブの長さも的確。BMWの6速マニュアルと比べても遜色なく、常にリラックスしてドライブ可能だ。
オートマティック・ギアボックスがXFのそれよりも、素早い変速を行うのは、XEに搭載するにあたり、ソフトウェアに専用のキャリブレーションを施したからとのこと。
キックダウンはもう少し速くてもいいような気もするが、これもステアリングに備えつけられたパドルを弾けば問題なし。厳密にはBMWのギアボックスにあと及んでないのは事実だが、全般的な完成度に不満はない。
パッシブ・サスペンションのそれぞれのモード間の違いはあまり大きくはない。ただ、どのモードでも特にフロント・タイヤの路面への食いつきがとてもよく、したがって安心してスピードを出すことができる。
これに加えてスポーツ・モードでは、敏捷なフロントと一切のラグなくリアも追従してくる。九十九折を攻めるようなシチュエーションでも、十二分に楽しませてくれるはずだ。
かなり大きな凹みや、橋に利用されるような大きいジョイントを踏んだ際は、明確なハーシュネスをキャビンに伝えてくることがあるが、これはごく一部の状況に限られるので英国の路上でも顔をしかめる必要はなさそう。
決してふわふわと柔らかい仕立てではないが、スポーツ・モードでも気持ちがいい程度に引き締まっており、これならばアクティブ・ダンパーを選ぶ価値は大いにあるといっていい。
総じて、BMW 3シリーズの過剰なスポーティネスと、メルセデス・ベンツCクラスの快適性を優先させた仕立てのちょうど真ん中に位置する味付けだといえる。
サスペンションに関係なく、ステアリングはXEの大きな強みである。特に直線走行時の安定感は特筆に値するレベルにあり、重み、一貫性、正確性などすべてが絶妙にバランスした優れたステアリングの模範例といえる。