セアト・レオンSTクプラ280
公開 : 2015.04.27 23:40 更新 : 2017.05.29 18:44
かねてから車内スペースと実用性には定評があったセアト・レオンST。これにハイ・パフォーマンス・エンジンが組み合わさることにより、果たしてどのような味わいになっているのだろうか?
■どんなクルマ?
スピードと実用性。言ってみれば陰と陽の性質を、1台のクルマに共存させることがなかなか難しいことは読者諸兄もご存知のこととは思うが、どのメーカーも実現に向けて、果敢に挑戦している。
数あるメーカーのうちセアトが思いついたのは、通常のレオンSTよりも27mm長く、45kg重たいレオンSTのワゴン版にクプラ280のエンジンを搭載するという方法。
280psを発揮する2.0ℓエンジンをフロントに収めながら、リアには587ℓの荷室を確保したことが、果たして最高のブレンドとなるのか。あるいは単なるミスマッチに終わるのか。早速見ていくことにしよう。
■どんな感じ?
テスト車両の焦点となるのは、やはり280psの直列4気筒ターボ・エンジンを搭載している点だろう。もちろんワゴン・タイプになることにより車重が増加しているぶん、3ドアのクプラ280には劣るのだが、それでもエンジンのもたらす力強さはかなりのものだ。
エンジン単体のキャラクターから判断するに、市街地でゆっくりと走るようなシチュエーションでも十分な仕事をしてくれるのだが、やはり何といっても郊外の空いた道こそ、このクルマのエンジンを余すことなく味わうことができる。
1500rpm以下ではちょっとばかり精彩に欠けるのだが、ターボが回りはじめるその上の回転域からは、思わず手足に力が入ってしまうほどのスピードを披露してくれる。0-100km/h=6.1秒という数字は、フォード・フォーカスSTエステートでも適わない領域だ。
しかしながら相も変わらず、駆動方式が4WDではなく、FFであるため、電制LSDが標準でついているにもかかわらず、ドライ路面でもトラクションの確保にあたふたすることがある。
もっとも目立つのは6段MT(DSGはオプション)の最初の1、2速時に、フルスロットルで加速した場合だ。かなりのあいだ、盛大なスキール音をあげながらタイヤは空転し続け、アクセルをゆるめてやらないかぎり、壊れてしまうのでは? という感覚に陥る。
おそらくこれこそが、トラクション・コントロールを完全にオフにさせてくれない理由なのだろう。このようなクルマのタイプからは考えられないほど過保護なのだ。
ドライブ・モードは合計で4つ。そのうちの3つは、ステアリングの重みやスロットル・レスポンス、ダンパーの硬さ、デフ・ロッキングを、プリセットされたマッピングごとに切り替えることができ、もう1つは ’インディビジュアル’ と呼ばれ、それぞれの組み合わせをドライバーの好みで組み合わせることができる。