ポルシェ・パジュンのEVおよび水素燃料電池モデルを計画
公開 : 2015.05.05 22:50 更新 : 2017.06.01 02:10
ポルシェは次期エグゼクティブ・サルーンとしてEVモデルを製作中だ。このモデルは、EVおよび水素燃料電池を使用するモデルをラインナップに加える予定の次期BMW 5シリーズのライバルとなるモデルで、パワートレインがリアに搭載されているのが特徴だ。AUTOCARはこのモデルに関する特許出願をドイツ、中国、アメリカで出されていることも確認している。
ポルシェの親会社であるフォルクスワーゲンのR&D責任者、ウルリク・ハッケンバーグは、3月に行われたフォルクスワーゲンの年次会議の前日、プレス向けに行われたイベントで、EVモデルの開発を明らかにした。またこのイベントでは、水素燃料電池モデルの計画があることもハッケンバーグは明らかにしている。
この新しいEVモデルは、従来モデルと異なる構造にはなるが、基本的にはMSBプラットフォームを使用するという。このプラットフォームは、新しいパナメーラはもちろん、ベントレーおよび、パジュンというネーミングで知られるポルシェの新しいエグゼクティブ・サルーンに使用される予定だ。そのパワーユニットの出力は、テスラに対抗する435ps程度になるという。ショールームにいつこのモデルが到着するかどうかは現時点では不明だが、最も速い場合は、2017年後半、あるいは2018年初頭になると予測される。また、燃料電池スタックを持つバージョンは、限定生産というカタチで生産されることになる。
まだまだこのEVモデルに関しての情報は少ないが、テスラ・モデルSの426kmという航続距離を持つとされ、EVバージョンは718、そして燃料電池バージョンは818とネーミングされるという噂もある。
このEVモデルと水素燃料電池モデルとに共通したプラットフォームを使用するという方法は、水素燃料電池モデルとして専用のプラットフォームが必要なトヨタ・ミライと比較すると、コスト的に大きな優位性を持つことになる。また、このEVモデルおよび水素燃料電池モデルのプラットフォームに関しては、ニッサン・リーフのように既存のプラットフォームを使用するという方法ではなく、スタート・アップ時のテスラのように専用のプラットフォームを使用するという。しかし、専用とはいっても、先述した通り基本的にはMSBプラットフォームを使用することになる。バッテリーやリアに取り付けるモーターなどに対応するため、大掛かりな修正が必要だが、ベーシックな設計はMSBのままになる。そのため、昨年12月にポルシェのエンジニアは、リアにモーターをマウントする方法のパテントを取得している。なお、このEV専用に修正されたMSBプラットフォームは、eMSBと呼ばれる。
リア・ホイールに1個ずつ取り付けられるモーターは、アウディR8 e-トロンに使われているものと酷似しているという。しかし、ポルシェはこれを更に進化させたものを採用する。パテントをとったこの構造は、”ハロー・ポータル・アクスル” と呼ばれるもので、2台のモーターを持ち、各ホイール毎にステップ・ダウン・ギアを持つアッセンブリを使用する。そして、この車輪とステップ・ギアの接続方法はリジッド・マウントではないという。これらを読み解くと、オール・イン・ワンの駆動方式は非常にコンパクトで、更に重心位置が低いのが特徴だと推測される。実際、電気モーターのセンター・ラインは、リア・ホイールのセンター・ラインよりも下になると思われる。
この方式を採用することによって、リアは独立懸架方式のサスペンション・レイアウトを採用することが可能で、しかもリアの2つのモーターはもトルク・ベクタリング・システムを持つ。更に、スペース的にも有利で、燃料電池スタックをボンネットの下に収めることができる。
上部構造については、パジュンと同じものを採ることが可能なため、このEVモデルは、基本的なデザインについてはパジュンと共通だと思われる。しかし、専用のノーズとリアの処理がなされるという。
ウルリク・ハッケンバーグは、フォルクスワーゲンの年次会議の前日にプレス向けに行われたイベントまで、この計画を一切公表しなかった。フォルクスワーゲンeゴルフよりも上にクラスになるEVについては無言を貫きとおしてきた。しかし、このイベントで突如としてEVモデルに関する計画を暴露したこととなる。
ハッケンバーグはフォルクスワーゲンの燃料電池モデルについては、MQBプラットフォームを使用することを明らかにし、ポルシェのEVと水素燃料電池モデルについてはeMSBプラットフォームを使用するとした。また、アウディの燃料電池モデルは、MLBプラットフォームをベースとするQ7を基とする低いルーフのスポーツSUVであると発表した。
同時に、ポルシェの新しいスーパーサルーンについてもある程度の青写真を公言している。2012年にパナメーラ・スポーツ・ツーリスモ・コンセプトを公表しているが、これが新しいモデルを示唆するものと思われる。純粋なEVモデルではなく、プラグイン・ハイブリッドとなる予定で、ギアボックスの前にマウントされるブラシレスの95psモーターを持つ。これに333psの3.0ℓV6ガソリン・エンジンが組み合わせられるというもの。リチウム・イオン・バッテリーは9.4kWhで、モーターとエンジンの合計出力は416ps。パフォーマンスは0-100km/hが6.0秒以下であるという。CO2排出量は82g/m、そして燃費は28.6km/ℓになるという。モーターのみのでの航続距離は30kmで、モーターのみの最高速度は130km/hとされる。
ポルシェが、パナメーラ・ジュニアを略して現在パジュンと呼ばれているモデルについて、EVおよび燃料電池だけでリリースするという噂があったが、ポルシェがそれほどのセールスが見込めないモデルに投資をするとは思えない。従って、通常の化石燃料を使ったモデルは当然ながら生産が行われる。しかも、パジュンは、ミドル・クラスのエグゼクティブ・サルーンとして中国市場での大きなセールスを狙っているモデルとなる。現在、このセグメントは毎年100万台以上のセールスをマークしているが、その大部分はアウディ、BMW、メルセデス・ベンツによって支配されている。ここに風穴を開けたいというのがポルシェの狙いだ。