ベントレー・フライング スパーV8 第1回

公開 : 2015.05.08 20:50  更新 : 2017.05.22 13:50

今年の連休の間は、ベントレー・フライング スパーを試乗することになった。フライング スパーは、現行のモデルより、クーペのコンチネンタルシリーズから切り離され、独立した4ドア・モデルとして設定された。フロント廻りこそ、クーペと共通のイメージを持っているが、サイドビューからリアにかけては、4ドアに相応しい、ゆったりとしたデザインと居住性が特徴で、メルセデス・ベンツSクラスなどとは異なる趣を求める人達の人気を集めているという。今回の試乗では、そのゴージャスな造りの真価を試してみたい。

フライング スパーのボディサイズは、全長5315mm、全幅1985mm、全高1490mmでかなり巨大だ。価格の問題を抜きにすれば、競合のメルセデスのSクラスのロングに比べ、やや大きめで、ロールスのゴーストに比べれば、一回り小さい。しかし、このクラスの高級サルーンの居住性を考えれば、この程度のサイズは当然必要である。エンジンは従来からのW12気筒と、新たに加わったV8気筒があるが、今回借りだしたのは、V8バージョンで、ツイン・ターボチャージャーを装着し、3992ccの排気量から507ps/6000rpm、67.3kg-m/1700rpmの強大なパワーを発揮する。トランスミッションは8速ATで、近年のベントレーの公式通り4輪全てを駆動し、スタンディング・スタート0-100km/hを5.2秒で走り抜けるという俊敏さである。ボディ重量はやや重めの2560kgだから、このパワーは充分すぎるほどだ。

4月27日
ベントレージャパンから受け取ってきたフライング スパーは、まだ走行距離200km未満という真っさらの新車だった。ボディ・カラーは、エクステリアが濃紺のメタリック、インテリアがベージュの濃淡の2トーンで、ダッシュ廻りは明るいバーウォールナットが使われている。本革で覆われた室内は、新車の香りが漂いとても良い感じだ。フロント・シートに座ってみると、意外とボディ・サイズの大きさを感じない。中には、シートに座っただけで、大きすぎて手に余る、と感じるクルマがある中で好印象だ。走りだすと、ステアリング、アクセル、ブレーキのそれぞれの操作が、常に一定の力で操作することができ、リラックスしたドライビングが可能だ。こう書くと、そんなのは当たり前じゃないか、と言われそうだが、実は、多くのクルマは、ステアリングの切り始めで妙に重かったり軽かったり、或いはブレーキの踏力と効きのバランスが合っていなかったりするケースが多く、これらが積み重なってストレスになるのは間違いないのだ。スタートしてすぐに分かるのは、フロントの重量の軽さで、W12エンジン搭載車に比べV8エンジンモデルの回頭性の良さが明確に出る。こんなに判りやすい違いはめったに無いことだ。これも、好感度に大きく影響しているのかもしれない。当然のことだが、静粛性も優れていてV8エンジンのサウンドが囁く程に聞こえる程度で、静かな室内である。

4月30日
今日はよく晴れているので、撮影に出かけることにした。場所はアクアラインの先、金田の近くの漁港付近だ。ゴールデンウィークに入っているとはいえ、休日ではないので混雑は酷くない。100km/h程度の巡航速度で感じるのは、エアサスの効果で、絹のように滑らかに、すべるように走る感覚だ。これはベントレー独自の感覚で他のクルマでは得難いものだと思う。ショック・アブソーバはコンフォートからスポーツまで4段階に切り替えが可能だが、その何れでもスムーズな感触は変わらない。

撮影中にボディ・ラインを改めて鑑賞する。最もベントレーらしさを強調しているのは、フロント・グリルとヘッド・ランプ廻りで、この特徴的なイメージはコンチネンタル・シリーズの誕生以来変わらない躍動的なデザインだ。それに続くサイド・ラインはシンプルで嫌みなく、そのままリアエンドまで続く。リア・ドアはフロントに比べ、かなり大きく昇降は楽だ。テールエンドのデザインはシンプルというより簡素で、いつも、もう少しドラマティックでも良いと感じている。ただ、全体のラインからすれば、この収まりは自然で良いのかもしれない。

驚くのは475ℓを収納できる巨大なトランクで、ゴルフ・クラブも縦に入るのではないかと思えるほどだ。

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