AMGダイナミックセレクトでS＋やRACEモードをチョイスするとAMGパフォーマンスエグゾーストシステム内のフラップが開き、ダイナミックなサウンドが響くはずである。ところがホームストレートで聞いた限りでは、AMG GTの排気音はかなり控えめなものだった。このあたりも現代F1似なのだろうか。
「エンジン音はコンフォート・モードでは本当に静かで、RACEモードでもわりと低く響いてきます。クルマ全体の静粛性という意味では試乗車にオプション装着されていたダイナミックエンジントランスミッションマウントがかなり効いていると思います。ピットでアイドリングしているときにスイッチを入れてみたんですが、マウントが硬くなってパワートレーンの振動がビリビリと伝わってくるようになりました。低速走行時にはメルセデスのセダン並みに静かで、でもサーキットを攻めているときにはパワートレーンとの一体感を感じることができます」。

桧井は価格やクオリティに関しても言及している。「普通に考えたら、普通のAMG GTで1580万円、GT Sで1840万円という価格設定はリーズナブルだと思いますよ。それはやっぱりライバルを意識しているからでしょうね。質感は非常に高いし、アルミニウム主体で構成されているシャシーの剛性もしっかりしている。ワインディングを攻めるのもいいけど、リアのラゲッジスペースもたっぷりとした容量が確保されているので、旅に出るクルマとしても最適だと思います。ただポルシェ911と比べた場合には、弱点がないわけではありません。何しろ911はサーキットをしっかりと攻めることができるスポーツカーでありながら、GTとして普段使いも出来るという幅がある。AMG GTに関してはそれがかなりGT寄りに味付けされているということです。GTレーシング的な視点で見ると、先代のSLS AMGより前面投影面積が小さくなっているし、空力が良さそうなので、すぐに戦闘力を発揮するんじゃないかと思います」。

現在ラインナップされているGTとGT Sがポルシェで言うところの911や911Sなのだとすれば、今後のラインナップ拡充にも大いに興味が湧く。SLRマクラーレンやSLS AMGのようなスーパースポーツではないが、実用性に優れた現実的なスポーツカーとして、メルセデスAMG GTの今後の躍進に期待したい。

(文・吉田拓生　写真・前田恵介、上野和秀)

メルセデス AMG GT S

価格	18,400,000円
燃費	9.6km/ℓ
乾燥重量	1670kg
エンジン	V型8気筒3982ccツイン・ターボ
最高出力	510ps/6250rpm
最大トルク	66.3kg-m/1750-4750rpm
ギアボックス	7速スピードシフトDCT

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