メルセデス-AMG GT vs 911 GTS vs F-タイプR
公開 : 2015.05.11 23:50 更新 : 2017.05.29 19:32
華やかさでいうと、必ずしも上位にはならないだろう。インテリアはラグジュアリーというよりもプレミアムといったところで、仕上げも華やかというよりは実用的だ。
しかしインフォテインメント・システムは使いづらいと感じないし、エルゴノミクスにも不満らしい不満はない。ドラマさえ求めなければ、まったく嫌な面はないのだ。
フラット6はつるりとなめらかに回りゆく。もちろん自然吸気ユニットゆえに、430psを引き出したければ、7500rpmまで回してやる必要がある。
(ほかの2台を考えれば) ’たったの’ 44.9kg-mを引きだすにも、5750rpmまで回してやらなければならない。
しかし走りだすと、極めて上質で、丁寧に磨かれていることがわかる。仲良くなればなるほど、その分だけ微笑みかけてくれる911に心を揺さぶられてしまうのだ。
まるで親密に心が通じあった旧友に再開したかのような体験がそこにある。
リア・エンジンゆえ鼻先はとても軽く、ステアリングの重みは自信を与えてくれる。ロード・フィールはとかく優美で、望めば望むだけの正確性をもたらしてくれる。
一方、テスト車両に組み合わせていた7速PDKはメルセデスのユニットと同様にシャープだが、変速のなめらかさはジャガーが優っている。
その反面エンジンの全回転域におけるレスポンスの均一性、完璧なまでのリニアリティ、回転にともなう予想のしやすさは911GTSの右に出るものはない。
’もっと華やかでもいいじゃないか……’ とお思いならば、自らのスキルを磨いてみるのもいいかもしれない。パワーが欠けるぶん、それ以上に911GTSに対して与えてあげられるもの(スキル)が必要だからだ。
美味しい回転域は、他2台と比べると当然あがってくる。911GTSの場合は、3500rpm前後のミドル・レンジ付近で、なおかつ4速、100km/h前後が好ましい。そこからダウン・シフトを試みても、極めて迅速に完璧な回転まで合わせてくれる。
機械式LSD(他2台は洗練を優先し電子制御)と42:58の前後重量配分が理由で、ややフロントがリアに押され気味だが、これはかねてからの911ならではの姿勢。
スポーツカーの模範解答ともいえるボディのタイトさ、如才ない乗り心地、余計な飾りも輝きもない味わいは ”アクセルを踏んで、ポルシェを感じさえすればいいんだ” と、クルマ自身に諭されているようでもある。