ポルシェ911 GT3 RS
公開 : 2015.05.21 23:50 更新 : 2017.05.29 19:04
ピット・レーンを抜けると、GT3とのあいだに広がる大きな違いにすぐに気づく。これまでの落ち着きが嘘だったかのようなドラマティックさを見せつけてくるのだ。
GT3は、世界最高レベルの2ペダル・トランスミッションとともに9000rpmまで軽く回るパワートレインが印象的だった一方、RSは、GT3の基準をクリアしたうえで、与えれば与えただけのことに ‘やさしいサポートなしに’ 応えてくれる印象だ。
テストに使用したサーキットはテクニカルなコーナーを多く含んでいたが、こちらの狙い通りに寸分の狂いなく事を進めることができる。
グリップ・レベルにも不満はなく、電動パワー・ステアリングも期待値をクリアしている。
ゆっくりとターンインすると、ほんのわずかにアンダーステアの傾向を見せるが、微小なアクセル操作でいかようにもコントロール可能。
ねっとりとしたミシュラン製タイヤの忍耐強さもお見事。コーナーに入り、外側のタイヤに負荷をかけながら、出口へ勢いよく飛び出すという、オールド911と同じドライビングができるのだ。
GT3 RSは、これまで私が運転したどのタイプの911よりも遥かに上のレベルにある。ちょっとの勇気と相応のサーキット・スキルがあれば、GT3では絶対に味わえない境地に到達できるはずだ。
また、ジャーナリストを対象に行われる試乗会では多くの場合、禁止されているスタビリティ・システムの解除も今回は許してくれた。ここからも、コントロールに関するポルシェの自信が伺える。
コーナー中腹で、タイヤを信じ、意図的にアクセルを踏み込んでみても、RSは顔色一つ変えずに適度なスライドを許容しながら前へ進んでくれる。
バランスを失い、慌てふためくようなことがなく、軽やかに向きを変えてくれるのは、やはり4輪操舵システムのなせる技である。
スタビリティ・コントロールをオンにし、中腹でスロットルを閉じてみると、RSはくるりと向きを変えながら、穏やかなアンダーステアとともにコーナー出口へ向かう。これまたお見事だ。
ここからはアンダーステアを封じ込めるために、自慢のトルクを与えてやるのみ。華麗な高速コーナリングの一丁上がりである。
少なくともナンバープレートのついたポルシェでこんな経験をしたことはない。かくもあっさりと、しかし熱情を失わずにこれだけのことをやってくれたRSには、言うまでもなく5つ星を捧げたい。