メルセデス-AMG C63
公開 : 2015.05.25 23:50 更新 : 2021.01.30 21:38
このおかげで乗ってるあいだ中、ガス・ペダルを踏み込み続け、窓を開けっ放しにして、獰猛なビートに酔いしれていた向きも少なくないはずだ。
決してBMW M3のハンドリングに優るわけではなかったが、‘熱狂、狂気、陶酔’ というワードがぴったりなクルマだった。
ターボ・エンジンに載せ替えたことによって、はっきりと言って ‘あの’ お馬鹿さ加減は影を潜めている。
その代わりにメルセデス AMGが得たのは、絶対速度と粘り強さ、そして切り立った鋭さである。
おかげで足元はガッチリと硬い。コンフォート・モードでさえ、スコットランドの悪路でははっきりとボディを突き上げてくるし、助手席からの苦情も耳にできる。
そんな男らしさに対して、C63の信者ならば喜ばしいことにさえ感じられるかもしれないが、普通のメルセデス・オーナーならば、振動やロード・ノイズにすぐに気づくことだろう。
これに呼応する、新型のV8ユニットのパンチ力には冷や汗がでるほど。先代よりも熱狂にまみれている。近くで花火でもあがっているのかと思うほどのバックファイヤー音を耳にした時から、現行ならではの良さが光り始める。
先代のキング・サイズのV8ユニットは、自然吸気であるゆえに、低回転の力強さに満足できなかったことは否定しない。一方の現行は、ターボのおかげで低回転域から狂っているのだ。
なのに自然吸気さながらのリニアリティ。ターボ・ラグの類は最小限に抑えており、もちろんターボが牙を向き始めると、全身の毛穴から汗が吹き出しそうな加速力をもって魅せてくれる。