プジョー308SW GTディーゼル
公開 : 2015.05.26 23:40 更新 : 2017.05.29 19:00
■どんな感じ?
ドアをあけて運転席に滑り込むと、目の前には現行プジョー各車に共通する小径のステアリングが現れる。小径かつ太めのスポークは持つだけで俊敏なハンドリングを想像させてくれるけれど、GTではさらにステアリングの内側に赤いステッチが施され、スポーク下部にはGTのエンブレムが装着される。この赤いステッチはダッシュボードやドアパネル、シフトレバー周辺などインテリア各部にも同様に施されていて、いやがおうにも気分が高まる。
シフトレバー後方に設置されたシルバーのスタートボタンを押すと、2ℓターボのディーゼル・ユニットは目を覚ます。しかしこの時点ではおそらく、この308SW GTがディーゼル・エンジンを搭載しているとすぐに気付く人は少ないだろう。「Blue HDi 180」の名称で呼ばれるこの新開発ユニットは、それほど静かで、驚くべきことに振動に関してもガソリン・エンジン並みと思えるほど。
もちろん走り出せば、ディーゼル・ターボならではのトルク&パワーに驚かされることになる。先述したエンジン名の「Blue HDi 180」は最高出力180ps/3750rpmから名付けられたもの。最大トルクは400Nm/2000-2500rpmを叩き出し、ライバルであるVWゴルフGTDの最大トルク380Nmを上回り、クラストップレベルのパフォーマンスを誇る。
低回転域が力強いというイメージのあるディーゼル・ユニットだが、じつはアイドリングからすぐ上の極低回転域でのトルクはそれほど大きくない。だから交差点などゼロ発進のシチュエーションでは一瞬もたつくような感じを受けるものの、動きだしてしまえばガソリン・エンジンとは比較にならないトルクの厚さでぐんぐんと加速していく。
このユニットに組み合わされるトランスミッションはアイシン製の6速ATで、オーソドックスなシングルクラッチ式ながら最新の電子制御を備えることで素早いシフトチェンジを可能にした。文字通り「Quickshift」を名乗るこのATとの組み合わせで、ワインディングを走ることがじつに楽しい。エンジン回転数の上昇に比例してスポーティなサウンドを聴かせてくれるところも従来のディーゼル・ユニットらしからぬところで、『まわして楽しい』新感覚のエンジンだ。
パリをスタートして郊外まで、往復約500キロのロングドライブでは高速道路〜ワインディング〜そして欧州ならではのカントリーロードとあらゆる路面を走る機会に恵まれたが、スポーツモデルらしい「カタさ」を感じることは一度としてなかった。
高速道路の継ぎ目などの段差はトンッと小気味よくクリアして、ワインディングではペースを上げれば上げるほど安定するような印象を受ける。決してロールしないわけではなく、むしろしなやかにゆるやかにロールして奥で踏ん張るような、ドライバーに安心感を与える脚まわりだ。
プジョーの脚まわりといえば「ネコアシ」……というのはもう過去のハナシだと個人的には思っていて、最新のプジョーはドイツ車よりもドイツ車らしいフィーリングだと感じる。かつてのゴルフが持っていた高精度でありながらカドの取れた穏やかな乗りアジを、現代の道路事情に合わせて昇華させたシャシーと脚まわり。それが最新のプジョー308SW GTだ。