ホンダ・シャトル・ハイブリッドZ

公開 : 2015.05.27 23:50  更新 : 2022.12.12 21:30

  • ダッシュボードは、ピアノのような最近流行のブラックのパネルと、ソフトパッドで、お値段以上の高級感を望んでいる。開発責任者は1983年のシビック・シャトルを見に行ったそうである。あのインパネをマネしてほしかった……。時代に取り残されたおじさん(筆者)の独り言です。

  • キャッチフレーズは「さぁ、心のリゾートへ」。茶色の内装は リゾーター・ブラウンと名づけられた。若い女性が提案したそうである。実物は地味臭い。これがおシャレ、という感覚がセンスのないおじさんにはわからない。正直。ミドセンチュリー家具風???

  • マルチユースバスケットはハイブリッドX以上のグレードに標準装備。何を入れますか? 発明は必要の母である。

  • 2:1分割式の後席背もたれをバタンと倒すと、身長183cmの大人が寝られるフルフラット空間が現れる。全幅169mmの5ナンバー・サイズにとどめながら、荷室の全幅はフィットよりも拡げている。後席を倒さずとも、ゴルフバッグが4つ、ラクに入る。機能面はよく考えられている。積載重量は100kgを想定している。

  • 床下収納もついている。スペア・タイヤはない。電池はココとリア・アクスルの間に置かれている。

ハイブリッドなので、電気モーターのみで動いているときは驚異的に静かである。モーターは重い分、フィットよりも広い範囲で働く。重い分、エネルギーの回生も進むので、差し引き「いってこい」だそうだ。電気とは便利なものである。1.5ℓアトキンソンサイクル・エンジンは、回すと活発なサウンドを発する。そこがトヨタのハイブリッドとは大いに異なる。記憶の中のグレイスよりいい音のような気がする。インシュレーターが違ったりするのだ。

■「買い」か?

日本のステーションワゴン市場は往時、年間40万台あった。それがミニバンの普及によって大幅に縮小した。スバルレガシィレヴォーグに変わったのも、このようなメガトレンドのなせるわざであっただろう。

ホンダによると、一時、年間15万台規模までシュリンクしたワゴン市場は、近年、年間20〜27万台にまで回復している。ハイブリッド、すなわちプリウスαやフィールダー・ハイブリッドの登場で、ステーションワゴン魂に再び火を灯す人々が現れたのだ。

ハイブリッドを生命線とするシャトルは、電気モーターのアシストのおかげでダッシュ力もある。全開時にはウィ〜ンッというEV独特のSF チックなサウンドを聴かせてくれたりもする。スポーティなハンドリングと乗り心地を持つ、スペシャルティ感覚の小型ステーションワゴンとして、あるいはある種のクロスオーバーとして、老若男女に受け入れられる可能性を秘めている。

ただその、競合車は強敵フィールダー、という現実を踏まえつつ申し上げるのだけれど、”心のリゾート” にしては、内装デザインはあまりに現実的に思われる。あ、そうか。価格を冷静に考えてみよう。これは富裕層向けではない。いわば、近所の天然温泉である。日常生活の中の非日常、シャトルの目指すところの “心のリゾート” はそっちなのだ。お金持ちだって行くかもしれない。そう考えるとみなさん、これはお値打ちな、いいリゾートです。

(文・今尾直樹 写真・前田恵介)

ホンダ・シャトル・ハイブリッドZ

価格 2,380,000円
燃費 29.6km/ℓ
乾燥重量 1240kg
エンジン 直列4気筒1496cc + モーター
エンジン最高出力 110ps/6000rpm
エンジン最大トルク 13.7kg-m/5000rpm
モーター最高出力 29.5ps/1313-2000rpm
モーター最大トルク 16.3kg-m/0-1313rpm
ギアボックス 7速オートマティック


▶ 徹底解説 / ホンダ・シャトル
▶ 国内初試乗 / トヨタ・カローラ・フィールダー・ハイブリッドGエアロツアラー

記事に関わった人々

  • 今尾直樹

    Naoki Imao

    1960年岐阜県生まれ。幼少時、ウチにあったダイハツ・ミゼットのキャビンの真ん中、エンジンの上に跨って乗るのが好きだった。通った小学校の校長室には織田信長の肖像画が飾ってあった。信長はカッコいいと思った。小学5年生の秋の社会見学でトヨタの工場に行って、トヨタ車がいっぱい載っている下敷きをもらってうれしかった。工場のなかはガッチャンガッチャン、騒音と金属の匂いに満ちていて、自動車絶望工場だとは思わなかったけれど、たいへんだなぁ、とは思った。

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