DS 5 ブルーHDi 150 S&S
公開 : 2015.05.28 23:50 更新 : 2021.01.30 22:12
インテリアはほとんど変わっておらず、独特なセンター・コンソールとドラマティックにスロープしたダッシュボードは健在だ。ドイツの主流ブランドが好むミニマリズムと逆行することがどうやらDSの誇りらしい。
車格の立ち位置としては、プレミアム・ハッチバックとクーペ、クロスオーバーの境界上にあり、要するに簡単にカテゴライズするのは難しい。ただレザーのさわり心地がすこぶる良く、視界が良好、などといったメリットもたっぷりとある。
ダッシュボードとコンソールのデザインは、飛行機のコックピットからインスパイアされたとのことで、寝そべったフロント・ウインドウは頭上のすぐうえまで伸びている感覚だ。
後席はさして広くはないが、立方体に近い荷室は十分なサイズであり、4人が乗車したうえでそれぞれのラゲッジを収めたとしても、少なくとも窮屈には感じないだろう。
フラット・ボトムのステアリング・ホイールは、筆者にとって大きすぎると感じるが、シートは一般的なハッチバックよりも10mm近く下げることができるため、背の高い大人でも快適に運転することができる。
マニュアル車が組み合わせるギアレバーはやや高い位置にあり、ギアノブの質感もあまり高くはないが、操作感には影響をもたらしておらず、さくさくと変速できるのもいい。
149psを発揮するターボディーゼル・エンジンの洗練度合いも素晴らしく、深々とガス・ペダルを踏み込むと聴き心地エンジン音とたっぷりとしたトルク湧出が魅力である。
インギア時の瞬発力も “おっ!” と声をあげてしまうほどであり、求める速度を得るまでにさほどの時間はかからない。気をつけなければ、あっという間に制限速度を越してしまうため注意も必要だ。
ガラスとガラスのあいだにプラスティック素材をサンドイッチしたサイド・スクリーンが、外界のノイズをしっかりと跳ね返してくれるのもいい。高速域では極めて落ち着いていた印象をともなうのはこのおかげだ。
峠道でも、クロスオーバーに近い視界の高さとドライビング・ポジションのおかげで先を予想しやすい。タイト・コーナーでも無理なくステアリングを回せる位置にすべてが揃っているのも心地いい。
決してコーナーからコーナーへ全速力で飛び込んでいくタイプのクルマではないが、殊のほかコントロールしやすく、これが結果的に運転する気持ちよさをもたらしているのだ。
強いて不満を挙げるとすると、やはりフラット・ボトム・ステアリングだ。舵角を与えた状態から中立に戻すために手を添えていると、フラットな部分が手に当たるたびにガタガタとなって、結果的に集中を欠いてしまう。
もっとも特筆すべくは、あのあまりにも酷かった先代の乗り心地がきちんと改善されている点。パリの石畳のうえでも体が揺さぶられることはなかった。
アウトバーンを突進する類のクルマとは少し毛色が違うが、あらゆる路面状況でもきちんと落ち着いた走りができるグランド・ツアラーであることが今回のテストを通じて明らかになった。