GLMとローランド、‘音’ で表現するスポーツカーを公開
2015.06.02
ローランド株式会社とGLM株式会社は、独自の技術で近未来的な走行音を発する量産EVスポーツカーを発表した。
自動車の運転に対する環境への配慮が高まるなか、今後EVの需要が大幅に増加することを見込んだ京都のベンチャー企業、GLMによる発想で始まった企画だ。
従来のEVはモーター駆動による高い静穏性を長所とされる反面、エンジン音がないためスポーツカーなどで走りを楽しむドライバーにとっては物足りないという意見が多かったことが発想の種になったそうだ。
GLMの代表取締役社長である小間裕康氏は「われわれはEVをElectoric VehicleではなくExotic Vehicleと解釈しているのです」とコメント。
環境性能を謳うだけでは消費に結びにくいことから、“どうしても欲しい” という気持ちにさせてくれるものはなにかと考えた結果、魅力的な ‘エンジン音’ を奏でるクルマがあれば……と思ったという。
また「あとで音を加えたからこそ出せる魅力的な音もあるのです」と続けた。
今回GLMと協力して開発を進めたローランドの代表取締役社長である三木純一氏は「‘音への感性と音づくりの技術’ を開発のコアにしているわれわれにとって、プロの音楽家の要求に答えるだけでなく、そのノウハウを楽器以外にも用いることができて嬉しい」とコメントしている。
加えて、同社の上席執行役員である湯川純郎氏は「ハードウェア、ソフトウェアという2つの柱に加え、アートウェア(=Artware)という感性に訴える3つ目の柱を中心に、よりリアルな音を追求しました」と語った。
具体的には、音を切り取って再生するサンプリング技術の発展型であるBehavior Modeling Technologyという技術を用い、回転数やアクセル開度に応じた、極めてナチュラルなサウンドを実現しているのだそうだ。
発表会に用意されたのは、トミーカイラZZをベースにしてGLMが制作したEV。シート後方に設えられた小型の黒いボックスはスピーカー・ユニットに接続されており車内にエンジン音を模したサウンドを響かせるという仕組みだ。
販売は今年の秋を予定しており、値段はまだ確定していないが、法規上の問題をクリアすれば車外にも音を響かせられる装置も追加導入する予定なのだそうだ。
またローランドは、今回GLMと共同で開発したこの音声再現技術を他のメーカーよもシェアし、より幅広い分野で利用していきたいとの意向を明らかにした。
実際に乗ってみたところ、エンスージァストにとって決して無視できないEV特有の味気なさを見事に打ち消していると感じた。
数タイプのうち、われわれAUTOCARが体験できたのはV8ユニットを彷彿とさせる低音が響く力強いサウンドと、未来的なSF映画に出てくる乗り物が発するような ‘キーン’ といった甲高いサウンドだった。
アクセル・ペダルを踏めば踏むだけ盛り上がるサウンドは内燃機関を搭載したクルマと同じような高揚感をもたらしてくれる。
外から耳を済ませても、車内から聴き心地のよいサウンドは十分に耳にすることができ、決して乗員だけのお楽しみに終わらないのも、オープン・タイプならではの特徴である。
さらに技術が進めば ‘EV=つまらない’ という先入観を覆すことはほぼ間違いないだろう。
初夏の陽光をきらりと反射させながら、快活な音とともに走る真っ赤なEVスポーツカーを見て、未来の世界を覗いたような気持ちになった。