ボルボXC60 T6 AWD R-デザイン チューンド・バイ・ポールスター

公開 : 2015.06.08 23:50  更新 : 2022.12.12 21:30

  • 直列6気筒はそのメカニズム上、等間隔爆発となるため、スムーズなエンジンがつくりやすい。現在、絶滅危惧種になっているのは、多くのメーカーがクラッシャブル・ゾーンをとりやすいV型エンジンに宗旨替えしてきたからだ。

■どんな感じ?

アクセレレーターを軽く踏み込むと、XC60の2t近いボディはグワッと反応する。過敏なくらいに。雪道だったら、即座にトラクション・コントロールが働くだろう。ポールスターのロム・チューンはものすごくわかりやすい。いわば、ビックリ箱である。オオッと思う。そのあと、いかにも6気筒らしい厚みと軽やかさが混在したスムーズな回転が訪れる。

6速オートマチックとの相性もピッタンコで、直6エンジンの滑らかさをいささかも途切れさせることがない。直6はその機構上、等間隔爆発を特徴とする。滑らかに回る資質、才能をもって誕生している。ボルボのそれは、ボルボらしくまろやかなフィールを身上としている。

テスト車はR-デザインゆえに20インチのタイヤを履いているので、低速では相当硬い。最初の当たりがゴツゴツする。ターンパイクまで行ってしまうと、乗り心地は快適に感じる。路面がよいのと、専用スポーツ・サスペンションに適した速度になるからだろう。

セダンのS60比で最低地上高は100mm、ということは10cm高くなっているけれど、腰高な印象は微塵もない。電動油圧のアシストということもあって、近頃珍しいほどステアリング・フィールがよい。この滑らかさもまた惜別に値する(まだ、なくなりませんけど)。

T6エンジンは遡ると、1990年代のボルボ最後の後輪駆動、960に行き着く。のちに850の主力となる横置き5気筒や、4気筒は、960の直6をルーツとするモジュラー・エンジンであった。

余談ながら、この960の直6、筆者は「ポルシェが開発した」と思い込んでいたけれど、ボルボ・カー・ジャパンの商品企画担当者によると、そうではない。ポルシェの研究開発部門であるヴァイスアッハが関与したことは事実だけれど、ボルボは自社でエンジンを開発する能力をもっている。1929年に最初の6気筒モデルを発表していたほどの経験と伝統をもっている。ボルボマンの矜持もある。

記事に関わった人々

  • 今尾直樹

    Naoki Imao

    1960年岐阜県生まれ。幼少時、ウチにあったダイハツ・ミゼットのキャビンの真ん中、エンジンの上に跨って乗るのが好きだった。通った小学校の校長室には織田信長の肖像画が飾ってあった。信長はカッコいいと思った。小学5年生の秋の社会見学でトヨタの工場に行って、トヨタ車がいっぱい載っている下敷きをもらってうれしかった。工場のなかはガッチャンガッチャン、騒音と金属の匂いに満ちていて、自動車絶望工場だとは思わなかったけれど、たいへんだなぁ、とは思った。

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