ボルボXC90 vs BMW X5 vs ランドローバー・ディスカバリー
公開 : 2015.06.16 23:50 更新 : 2017.05.29 19:32
現時点でランドローバーの古さを責めるべきだろうか? たしかに少しは責めてもいいだろう。
ランドローバーはわれわれに “ディスカバリーはモデル初期のクルマではなく、モデル末期のクルマであることを注釈しておいてほしい” と要望を出している。
だから一応は書いておいたが、そんなことは買い手にとっては関係のないことである。213g/kmというCO2エミッションがとどめを刺すだけだ。
ちなみにX5は156g/km、XC90は152g/km。
ならばディスカバリーをこき下ろすためだけに呼んだのか? とお思い(お怒り)の読者もいるだろう。
ところがそんなことは全くない。
まずランドローバー・ディスカバリーの腰下は、他の2台と比べ物にならないくらい強靭だ。それにシート・ポジションが高く、実に見晴らしがいい。窓のアンダー・ラインが低いゆえ、見晴らしもかなりいい。
ミラーも大きいし、四方が角張っているため、障害物との位置関係もつかみやすい。テールゲートの上半分がガラス面になっているため後方視界も申し分ない。
当然といえば当然かもしれないが、これほどドライバーに優しいクルマが他にあるだろうか? いろいろと頭をつかう前に、肌感覚で親しみやすいクルマだとわかる。
SUV(スポーツ・ユーティリティ・ビークル)から、いい意味で ‘S’ を取り払った、完璧なまでのUV(ユーティリティ・ビークル)なのだ。
キャビンのフィッティングや仕上げも同様。
いかにもお金がかかっていそうな、ピカピカに磨きあげられたボタンなどはどこにもないが、グローブをはめたままでも操作できる、いい意味で飾り気のないスイッチが私は好きだ。
それに、ディスカバリーを愛するカスタマーは、それぞれの目的に合わせて徹底的に使い込む率が高い。そういったところもディスカバリーのいいところだ。なんというか、もったいぶる必要がなく、ガシガシと使えるのだ。
これに対して1999年にデビューしたX5は、お金をもっている人々が、お金をもっていることを示すために使われてきたように思う。
沼地に突っ込み、岩場を駆け巡るX5が全世界にどれくらいいるだろうか? 自分がこれまで乗ってきたBMWよりも大きくて、見栄えが良いから、あるいはファッション性を理由にこのSUVは売れたような気がする。
だからともいうべきか、キャビンの質感、エルゴノミクスはすこぶるいい。(最新のディスカバリー・スポーツと共通の)iDriveシステムもとても使いやすい。ディスカバリーよりも、シートやステアリングの調整幅が大きいのもいい。
ディスカバリーにはどうしても勝てない部分だ。
対するサイド・ウインドウの上下の幅は、現代のSUVよろしく狭め。したがって視界はディスカバリーに劣る。X5は4×4に乗っているというよりもむしろ、背の高い5シリーズに乗っているような気持ちになる。
先代のXC90といえば、X5よりもディスカバリーの立ち位置に近かった。ただ現行モデルは、X5に近い。たとえばキャビン、ウインドウ・ラインはX5と同じように高い位置から始まっている。
反面、リアのガラス面はX5ほど湾曲しておらず、どちらかというとフラット。それゆえ視界も広い。ドライビング・ポジションはとても大きく調整できる。
内装の雰囲気はクリーンかつリッチ。細部まで徹底的に磨きあげられ、選ぶマテリアルやボタンの少なさ、大きな見栄えのいいタッチスクリーン・ディスプレイ(反応もいい)など、どれもが ‘いかに高級感を引きだすか’ を現代的な解釈で行っているように思える。