スズキ・アルト・ラパン

公開 : 2015.06.22 23:50  更新 : 2022.12.12 21:29

乗り心地は硬めで、ロールはほとんどしない。いい路面ではいいけれど、悪い路面では若干跳ねる。タイヤ・サイズは165/55 R15のアルトに対して、155/65 R14と1インチ小さくて細いのに、アルトより硬い。おそらく、アルトよりもフラットでどっしり感のあるセッティングの方が女子ウケがよかったのだろう。

ステアリングはものすごくスローだ。いわゆる ‘手アンダー’ になるくらいに。ロック・トゥ・ロックは4回転もある。アルトは3.5回転である。Uターンしようと思ったら、エンヤコラ、エンヤコラ、もうひとつおまけにエンヤコラと回す必要がある。ステアリング自体は軽い。

エンジン音はアルトより静かだけれど、アクセル・ペダルを床まで踏み抜くと、それなりにうるさい。でもって、遅い。副変速機付きCVTは、フル加速時に一度だけごく小さなショックがある。

CVTのギア比はアルトと同じで、車重はアルトより30kg重い。その30kg増ゆえに遅く感じるのではなくて、アルトより音を抑えているためではあるまいか。アルトは抜けのよいエンジン音が鳴り響く。そこに爽快感がある。ラパンはつまり、‘走り’ の演出が抑制されている。

■「買い」か?

なにぶん女性向けに開発されたクルマなので、オジサンがどうこう申し上げる筋合いではない、にしても、もうちょっと運転の楽しさを女子に教えてあげる啓蒙的な気持ちがあってもよかったのでは……と思ったりもする。

というのもラパン3世、50〜60年代のナッシュ・メトロポリタンとか、もちろん開発陣も意識したであろうミニとか、あるいはスズライト・キャリィとかダイハツ・フェローとか、ミニをお手本にした日産Be-1だとか、つくり手に自動車エンスージアスト的歴史観は皆無だったわけだけれど、現代女性の生活者視点とスズキの小型車づくりの長年の蓄積が交差してデザインの系譜というものを彷彿させる。ようするにクルマ好きのオジサンにもウケるのではないか、と筆者は推察するからである。

記事に関わった人々

  • 今尾直樹

    Naoki Imao

    1960年岐阜県生まれ。幼少時、ウチにあったダイハツ・ミゼットのキャビンの真ん中、エンジンの上に跨って乗るのが好きだった。通った小学校の校長室には織田信長の肖像画が飾ってあった。信長はカッコいいと思った。小学5年生の秋の社会見学でトヨタの工場に行って、トヨタ車がいっぱい載っている下敷きをもらってうれしかった。工場のなかはガッチャンガッチャン、騒音と金属の匂いに満ちていて、自動車絶望工場だとは思わなかったけれど、たいへんだなぁ、とは思った。

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