スバルBRZ tS
公開 : 2015.06.30 23:50 更新 : 2017.05.29 18:41
■「買い」か?
STIが標榜する“誰がどこで乗っても同乗者を含め「気持ちがいい」と感じ「運転が上手くなる」走り”という説明はその通りだと思った。明らかに標準のBRZよりもすっきりと洗練された感じに仕上げられている。だが走りの愉しさという点では疑問を感じた。前述した通りにリニアなクルマなのだが、だからドライビングが愉しいのか? と言われるとそんな感じがしなかったのである。
加減速でもコーナリングでも4輪が絶えずきれいに接地している感じで、なおかつ少しパワーが控えめな影響によりFR感が希薄。結果としてドライビングの個性と言うか捉えどころがない感じ、というのは筆者のトヨタ86、スバルBRZ全般の基本的な印象である。今回のBRZ tSは、これらの特性が助長されており、乗り味自体はスッキリしているけれど、ワインディングをいつまでも走っていたい! と思えるような愉しさは感じられなかった。雑味をろ過し過ぎてしまった純水、と言ったら言い過ぎだろうか。
エンジンにパンチがあって、限界域ではリアのグリップ感が上手い具合に危うくなって愉しい代表格は、現行モデルではBMW Z4(ラインナップ全般)だと思っている。一方フトコロの深い脚廻りと、ハンドリングに寄与するエンジンパワーの融合という点ではマツダ・ロードスターが当代最高である。
試乗した後、開発者インタビューの時間があったので、BRZ tSの開発を担当したSTIの渋谷真氏と森宏志氏に上記の印象を話してみた。すると両氏曰く、絶えず4輪に荷重を上手く分配して走行安定性を高める考え方は、4輪駆動によって高い走行安定性を目指してきたスバルやSTIの伝統的なもの。このためタイヤの銘柄ひとつとってもピークグリップは高いがウェットが苦手といったクセのあるものを避けている、とのことだった。
その説明には「なるほど!」と思えたのだが、しかしBRZ tSに対する個人的な印象は変わらない。限定300台という売り文句が気持ちを焦らせるが、興味のある人はしっかりと試乗してから決断を下すべきだ。
(文・吉田拓生 写真・花村英典)
スバルBRZ tS
価格 | 3,990,000円 |
乾燥重量 | 1240kg |
エンジン | 水平対向4気筒1998ccターボ |
最高出力 | 200ps/7000rpm |
最大トルク | 20.9kg-m/6400-6600rpm |
ギアボックス | 6速マニュアル |
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