先述の大パワーは、345/30 R20というファットなタイヤに伝わる。ミシュラン・スポーツ・パイロットなる銘柄であり、スタビリティ・コントロールと合わせて路面に動力を伝える。

相変わらず路面は水浸し。気づけばあっという間にスピード・メーターが200km/hを指しているが、リアはくねくねと身を捩らせていることが明らかにわかる。恐怖、である。

と思った途端に、足元の感覚が消え失せる。ドライバーが慌ててカウンターを当てたが間に合わず。One:1はくるりとスピンして、雨でぐっしょりと濡れる草の上で停止した。この時、お互いの顔は引きつっていたに違いない。

なにもクルマが問題ではない。スピンし始めた地点に戻ってみると、そこには深い水たまりができていた。One:1の並外れたダウンフォースをしても、アクアプレーニングを避けることは難しかったようだ。

次は私がドライブする番。レーシングカーに乗る際の心もちである。タイトなシートに身をねじ込んでみると、ポジションは速く走るためだけに設定されているように感じる。

周りを見わたせば、ほとんどがカーボンで覆われており、それ以外はアルカンターラといった具合だ。ステアリングのむこうには1500psまで刻まれるパワー・ゲージ、450km/hまで刻まれる速度計、温度表示計が見える。どの数字もまったく大げさなものではない。

エンジンは従順。ブースト・ゾーンに至るまでのトルクもふんだん。ステアリングは一挙手一投足が精密でありフィードバック量も申し分ない。数mmの操舵にもロスなく反応する。