M3の場合は、押すべきボタンがVXR8のそれよりも多い。ダンパー、ステアリング、エンジンをもっとも元気のいいセッティングにするにはスポーツ+を選び、ESPをカットするにはスタビリティ・コントロール・ボタンを長押しする、といった具合だ。C63も然り。

ローンチ・コントロール・システムはこの5年間で飛躍的な進化を遂げたが、それでもやはり完璧な発進をしてくれないのは事実だ。

そんななかでもM3のシステムは特筆に値する完成度。回数を重ねるごとに、さらに良くなっていった。

C63はスムーズさに欠けるものの、演出はドラマティックだ。安定感もある。しかし強大なトルクゆえ、ホイールスピンを許容しやすく、足元がすくわれることが少なくない。

VXRはちょいと大変。クラッチ・ペダルとギアレバーがあるからだ(ATも選択可)。ローンチ・コントロールは極めてデリケートであり、後輪にしかるべくパワーを送り込むために、繊細なペダル操作も要する。いい意味で ‘オールド・スクール’ である。

VXRは何をするにしても、数値が示すとおりにふるまう。ノイジーでスモーキー。逞しさは評価を左右することになるだろう。

ドラッグ・コースを用いた加速力に関してはVXRに圧倒的な差をつけてC63 Sの勝利。M3がわずかな差で次点となる。一般的な環境ならば、BMWの加速の積み重ねはなめらなうえ、トランスミッションの動作マナーも優れるため、C63 SとM3の間にはほとんど差はないといっていいだろう。

高速域でのパワー伝達はVXRの得意とするところではない点も明らかになった。C63やM3は着実に路面を捉え続けているのに対して、VXRにはパワーのすべてが路面に伝えられていない歯がゆさが付きまとうのだ。