メルセデス-AMG A65クーペ
公開 : 2015.07.22 23:40 更新 : 2017.05.23 16:36
■どんな感じ?
ダイナミズムという言葉さえ無視すれば、驚くほど能力の高いクルマだといえる。
ただ、いくら有能な ‘魔法の杖’ をもったメルセデスをしても、Sクラスをスポーツカーに仕立てあげることは難しかったということを最初にことわっておく。
しかしながら、S65クーペのことを無用の長物とまでいうつもりはない。というのも、高速域でコーナーに飛び込んでも十分なグリップ・レベルが確保されているし、3つのモードのうちスポーツ・モードに固定してさえいればボディの動きも驚くほどコントロールしやすいからだ。
問題はステアリングにある。車体が重いゆえ、コーナーにタックルした際に、重さに抗えるだけの自信をもたらしてくれないのだ。単刀直入にいえば ‘フィードバックが欠落’ しているということになる。
シャシーを ‘AMGダイナミック・カーブ・モード’ にスイッチすると、自動的にボディをリーンさせコーナリングを手助けしてくれることは実感できるのだが、だからといって高いコーナリング・スピードが維持されるというわけではない。
メルセデスの言葉を借りると ‘快適性重視’ ということになるものの、高速シケインをスルスルと走り抜ける……などというレベルにはお世辞にも達していない。
コンフォート・モードにセットした際の路面の凹凸の伝え方は、Sクラス・クーペよりも露骨。Sクラス・サルーンに比べると明らかに硬質である。マジック・ライド・システムも、サルーンに比べると引き締まっていると感じる。
パワー・デリバリーは、峠道を攻めるというよりもグランド・ツーリングに向いた仕立てである。したがって、意図的にアクセル・ペダルを蹴りこんでみると、即座にトラクション・コントロールが介入する。大パワーも品よく扱う、というのが正しい扱い方のようだ。