コンコルソ・デレガンツァ・ヴィラ・デステ
2015.05.23〜24
2015年のコンコルソ・デレガンツァ・ヴィラ・デステがBMWによるサポートのもと開催され、レイク・コモ畔に佇むヴィラ・デステ・ホテルでは、丁寧に手入れされた敷地内に来場者やエントラントを迎え入れていた。毎年のことながら主催者が組織する選考委員会は、世界中から届くエントリーを精査し、幅広いモデルを選び出してこの優雅な光景が広がる芝とテラスを飾り立てている。土曜日に開かれるコンクールは、エントラントのみを対象にしており、ゲストと招待客だけが入ることを許される。日曜の部は、湖の南寄りにあるヴィラ・エルバの敷地で開催され、一般にも開放する形式だ。
土曜日のヴィラ・エルバには見逃せない催しがある。RMサザビーズのオークションが開始されるのだ。そこにはBMWのアートカーが特別展示され、来場者は視界を遮られることなくあらゆる角度から素晴らしいモデルを眺めることができる。そのなかにはアンディ・ウォーホールが担当したM1もあった。アーティスト本人がハンドペイントしたアートカーはこのクルマだけで、伝え聞くところによるとウォーホールはたった23分で作業を終えたという。そしてそのペイントのまま1979年のル・マンに出走し、総合6位/クラス2位を手にしている。それ以外のアートカーは、アーティストが筆を取ったのは1/5スケール・モデルに対してで、その後BMWのスタッフが実車にそのペイントを施したのだ。BMWはこのほかにも、M3の30周年を祝って4世代のモデルを展示し、衝撃的なイエローに身を包んだ3.0 CSLオマージュというコンセプトカーも披露した。これは名が示す通り’70年代に活躍した3.0CSLを現代風に解釈したものだ。
このほかコンセプトカーやプロトタイプが飾られた。マセラティをベースにしたモストロ・ザガートは真っ黒の不気味なモデルだが恰好はいい。ほかにもランボルギーニ・アステリオンLPI 910-4、3月のジュネーブでデビューしたフェラーリF12ベースのトゥーリング・ベルリネッタ・ルッソ、デザインアワード・フォー・コンセプトカーズ&プロトタイプスを受賞したベントレーEXP10スピード・シックスなどが来場者の熱い視線を浴びていた。
土曜日のヴィラ・デステにはふたつのエリアを結ぶ送迎車のほか、パワーボートを使ったシャトル・サービスも運行された。チェルノッビオという1車線の道路を行く送迎車を利用するよりも、ボートの方が賢い選択といえた。なにしろ、道幅の狭いチェルノッビオはイベント渋滞で普段よりも混み合っていたからだ。
メーカーのヘリテージを反映したコンセプトカーで未来を占うのもいいが、ここで一番の関心はヒストリックカーの展示だ。9つのクラスにはそれぞれ示唆に富む名称が与えられ、例えば「美しき振る舞い」「晴れやかな気持ちになる良薬」「メイド・トゥ・メジャー — あつらえ衣装」「湖上のハリウッド」「驚速とはどんなスピード?」などがあり、総計51台がやって来た。1925年型ファーマンA6Bクーペ・ドゥビルに始まり1980年型BMW M1まで並んだそのブースには、驚くべきモデルが佇んでいた。
人目を引くブライト・イエローのボディに真っ赤なタイヤウォール、そう赤なのだ、決してタイプミスではない。それにクロームのサイド・エグゾーストが眩しいこのクルマは1952年型ペガソ・クプラという。1953年のニューヨーク・ショーで初披露されたときから変わらぬ存在感で、今回においても“美しき振る舞い”という言葉が一番ふさわしいことは疑いない。それなのにこのモデルは「美しき振る舞い」クラスにエントリーせず「メイド・トゥ・メジャー」に登録されていた。ワンオフのデザインということで、どちらのクラスにもエントリーできたからだ。このペガソは、審査員が最もエキサイティングなデザインのクルマに与えるトロフェオ・アウト&デザインと、16歳以上の投票で選ばれるトロフェオBMWグループ・ラガッツィのふたつの賞を勝ち取っている。
招待客のみが入場を許されるコンクール・イベントはこの地位の催しにふさわしいもので、セッティングもプレゼンテーションも非常に高いレベルにある。そしてディスプレイされる素晴らしいモデルはすべて希少なクルマばかりだ。一例を挙げると、本年のデザイン・アウォードを争うには少々荷が重いか、もしくは相応しいかもしれないし、ちょっと突拍子ないかもしれないが、8.2ℓのキャデラックV8をミッドに積むパンサー6ロードスターがお目見えした。これは’70年代に登場したモデルで、6輪F1マシンのティレルP34をロードモデルに仕立てたような見た目だ。読者の皆さんの目にはどう映るだろうか。なにしろ、たった2台製造されただけで、実車を最後に目にしたのは、いつのことか。
コンクール以外でも、金曜の晩に開催されたRMサザビーズ・オークションにはおもわず息を呑むクルマが陳列された。目を見張る美しさの1949年型アルファ・ロメオ6C2500SSヴィラ・デステ・クーペ、ヴィニャーレがエレガントなスタイリングを与えたフィアット8Vカブリオレ、それにフェラーリ250GT SWBカリフォルニア・スパイダーは、288GTO、F40、F50、エンツォ・フェラーリといったスペチアーレと共に飾られていた。入札も盛り上がり、最高落札額はフェラーリ212エクスポート・トゥーリング・バルケッタで、672万ユーロという額を記録した。
英国からエントリーしたクライブ・ビーチャム所有のフェラーリ166MMトゥーリング・バルケッタ(ジャンニ・アニェッリ、ジャック・スワーテルが過去のオーナーに名を連ねる)は「ジェントルマンズ・レーサーズ」クラスのメンション・オブ・オナー賞に輝き、さらに土曜日のコッパ・ドーロ・ヴィラ・デステ・アット・ヴィラ・デステと、日曜日のトロフェオBMWグループ・イタリア・アット・ヴィラ・エルバという一般からの投票形式の2つのベスト・オブ・ショーも手にした。そして、審査員によるベスト・オブ・ショーは、1932年型アルファ・ロメオ8C2300ザガートに与えられた。