メルセデス-AMG GT
公開 : 2015.08.11 23:45 更新 : 2017.05.23 16:36
あらゆるスポーツカーのなかで、自らが曲がることを楽しもうとするクルマはあまりない。
GT Sの場合、一切のロールはねじ伏せられ、鋭く鼻先をエイペックスに向ける。
速度をあげればあげるほど、目を大きく見開かなければついていけない。相応の集中力も必要だ。
とてつもなく反応のいいステアリングは直進時でも十分なフィードバックを与えてくれる。少し神経質なほどだ。
締めあげられたサスペンションは、路面の隆起を正確にトレースする。エキサイティングか? 言うまでもなくエキサイティングだ。
その分、乗り心地はコツコツと硬質。逆に柔らかいダンパー・セッティングを選ぶと、不快ではないがふわふわする。波長が大きいアンジュレーションにぶつかった際のボディの動きはゆったりと落ち着いているが、特に周期が短い場合、サスペンションの動きに緊張感がただよう。
タイヤもまた、少しばかり路面に影響を受けやすい。大きめの入力を受けると、スペースフレーム・シャシーを介して衝撃が伝わってくる。
事実、洗練されたクルマではない。日常の使用域では申し分ないのだが、パフォーマンス・カーに求められる洗練性は今ひとつである。
ペダル、ステアリングなど諸々のコントローラーの動作は軽やかなのだが、だからといって簡単に運転できるというわけではない。繊細ではないとでもいおうか。
どちらかというとオールドスクールであり、ワイルドな性格でドライバーを魅了するタイプだ。これを好むか好まないかは、あなた次第である。
■経済性とランニング・コスト
“AMGライド・コントロールと電制ディファレンシャル・ロック、レース・モードはGT Sにしか用意されない。そのために£13,300(258万円)を追加で支払う必要がある” ― ヴィッキー・パロット(ロードテスト編集補佐)
色々と追加すると、結局は価格が跳ねあがる。この手のクルマの常である。念のために言っておくが、素のGTの価格はポルシェ911 GTSと同じくらいである。
販売時期はGTよりもGT Sの方が先。したがってセールス・ボリュームが縮小するのもGT Sの方が先であることが予想される。
AMGライド・コントロールと電制ディファレンシャル・ロック、レース・モードを必要とするならば、Sを選ばなければならない。この場合、£13,300(258万円)の追加資金が必要となる。
カーボン・セラミック・ディスクが£5,995(116万円)、AMGパフォーマンス・シートが£1,895(37万円)というのも辛い。