ルノー メガーヌ ハッチバック ゼン/ルノー メガーヌR.S. 第1回
公開 : 2015.08.20 20:50 更新 : 2021.03.05 21:35
5月の連休過ぎからなぜか猛烈に多忙となり、この長期インプレションのルールに則り、2週間に亘って試乗をし、そのレポートを記述する、という余裕が全くなくなってしまった。我々のように常時いろんな車種に乗って比較をしている人種にとって、この状況はとてもつらいことだがそれも止むを得ない。従って、このレポートもしばしの間、お休みせざるを得なかったのだが、8月に入り、漸くスケジュールにもゆとりが出てきたので、このインプレッションを再開することとした。
再開後、初の試乗車は、ルノー メガーヌである。しかも、2週間のうち、最初の1週間はシリーズの中でも特にお買い得な4ドアのハッチバック・モデル ゼンに乗り、後半の1週間は最高峰のR.S.に乗る、という贅沢なメニューに決まった。
8月4日
ルノー・ジャポンから、フレンチ・ブルーも鮮やかなルノー メガーヌ ハッチバック ゼンを受け取る。このクルマはメガーヌ・シリーズの中では、最もリーズナブルで、249万円というプライスタグが付けられている。
メガーヌというと、一般的に言って、R.S.のイメージが強くスポーツ色が全面に出た印象があるが、実はこのゼンは、ファミリーカーとして、極く普通に乗れてしまう、おしゃれなフランス車というのがウリなのである。
5ドア・ハッチバックのボディは、全長4325mm、全幅1810mm、全高1460mmで、いわば身体にピッタリとフィットする過不足ないサイズである。例えば、大人2人、子供3人の家族でも、リアのたっぷりサイズの荷室にらくらく荷物を放り込めば、ロングツーリングも何の問題も無い。ウィークデイに奥様がお買い物に出ても、このボディ・サイズは取り回しがし易く、クレームがでることはまずないだろう。奥様同士のランチ・ミーティングでジャーマン・ブランドの角付き合わせるような場面に出くわしても、このゼンなら、シンプルで控え目ながら、すっきりとしたセンスの良さで、軽くいなせることは間違いない。
1.2ℓのターボチャージャー付きDOHCエンジンは活発で、1.3tのボディをすいすいと引っ張ってゆく。数値上の出力は132ps/5500rpm、20.9kg-m/2000rpmだが、それ以上のパワーを感じさせるトルクの出方だ。現在のルノーのラインナップの中で、上級の2ℓエンジン以外はほぼこれがスタンダードとなっていて、車種によってチューニングが微妙に異なるが、この仕様が最もパワーを重視している。
6段のDCTシフトはスムーズで、夏休みで混雑の激しい首都高で、一寸刻みの渋滞にはまっても、シフトショックは殆ど感じられず、不快な感触は全く無い。こんな状況でも、エアコンは極めて強力で36℃の強烈な暑さの中でも、寒くなるほどである。近頃の日本の夏は尋常ではない暑さになっているが、現在の輸入車はその対策も万全になっているようだ。
ブラックで統一されたインテリアは、如何にもフランスの実用車らしくシンプルだが、けっして簡素ではなく、変に自己主張がなくて気持が良い。スイッチ類のタッチ、特にウィンカーの感触はとても良く、間違いなく2クラスほど上のフィーリングだと思う。ステアリングも含め、女性でも楽に操作できる絶妙な力加減が設定されていて、好感が持てる。意外にもステアリングはトルクに鋭敏で、アクセルのオン・オフで操舵力が微妙に変わるが、この辺がスパルタンなR.S.とどの程度違うのか、興味深いところだ。当然、操舵の軽さには、16インチにサイズ・ダウンしたタイヤと70kg軽量化したボディ重量も影響していて、それが返って、敏感になっているのかもしれない。
8月6日
今日も猛烈に暑い。通勤で使っている首都高3号線の渋滞は更に酷くなり、東名の東京料金所まで全線が詰まっていた。しかも、既に外気温は38℃を指している。クルマの熱対策において、これ以上過酷な状況はなかなかないのでは、と思われるほどの酷さだ。流石にウインドウを開けているクルマは一台もない。メガーヌ ゼンのエアコンは想像していた以上に優秀で、オンにして直ぐに冷気が吹きだし強力に冷える。風量もかなり細かく調整できるから、好みの温度に設定できて快適である。
用賀から先は意外にも空いていたので、一気にアクセルを踏み込む。某国産車のように3500rpm辺りから無粋なエンジン音が高まる、と言うようなこともなくきれいに吹け上がり、パワーにゆとりが感じられる。ステアリングは、高速域になると過敏さが無くなり、適度な操舵感で路面のトレースも的確だ。これなら長距離をこなしても、最小限の疲れで済むだろう。
世田谷の住宅街の道は昔ながらで誠に狭い。我が社の駐車場もその狭い中に位置しているが、このメガーヌのサイズなら何の問題も無い。狭い道を進む時もギクシャクすることもなく、ボディ先端の見切りも良いから、不安は一切感じない。
メガーヌの中で、最も安価なゼンは、249万円で、同サイズのライバルと比べても、かなりお買い得だ。例えば、最大のライバルのゴルフを例に取れば、ゴルフTSI Trendlineが266万円で、その差は17万円もある。更に言えば、トヨタのオーリスは、ほぼ同じ仕様の120Tが何と259万0037円で、ゼンよりも高いのだ。このお買い得価格で、センスが売りのフランス車が購入できれば、申し分はないのである。