ホンダ・シビック・タイプR
公開 : 2015.09.30 23:55 更新 : 2017.05.29 19:09
■特徴
“6速トランスミッションへと伸びるシフト・ノブは、2002年式NSX-Rのそれと偶然の一致というわけではない” ― マット・ソーンダース (ロードテスト編集補佐)
先代のタイプRは、7500rpmまで回さなければ、201psのピーク・パワーを得ることはできなかった。これが現行モデルとの大きなちがいである。
現行の最高出力は先代の50%増し。さらに重大なのは、トルクの値が2倍まで膨れあがっている点だ。しかもそのトルクは、先代よりもはるかに低い3000rpm以下で湧きあがる。
このような改善を施すためには、当然、ドライブラインやシャシー技術を根本から改めなければならない。今まで自然吸気に頼ってきたホンダにとって、これはとても難しいことだった。
ホンダはあたらしいターボ・エンジンをこしらえるのみならず、サスペンションもまったく新しいものにした。もちろんこれに伴い、ステア・システムも新調しなおした。
エンジンは近年のライバルが搭載する4ポットと異なり、わずかながらにオーバースクエアである。排気量は1996cc。圧縮比は10:1をわずかに下回る。
オーバースクエアにすることで低速トルクを犠牲にしないために、バルブ・タイミングとリフト量を可変式とする。最高出力は310psを標榜しながらもCO2排出量は170g/kmまで抑えた。まずまずの数値だ。
タイヤを外側に出すためにフェンダーは大きくなっている。アームやリンクもタイプR専用となる。ホンダがいうところのデュアル・アクシスなるセットアップだ。
ステアリング・ナックルをストラットから離すことによってキングピン・オフセットをミニマムにしている。フォードのレボナックルとちかい。これにより従来のマクファーソン・ストラットよりもトルク・ステアが大幅に低減されるのだ。
後部はH型のトーションビームを採用。断面は標準のシビックとは大きく異なり、剛性が非常に高まっている。4本ともにコイル・スプリング、可変ダンパー、引き締められたブッシュが組みわされる。
トランスミッションは6速のマニュアル。シフトノブが2002年式のNSX-Rと一致しているのは偶然ではない。トランスミッションには専用のオイル・クーラーがつく。LSDはヘリカル式となる。
ホンダはコンチネンタルに協力を要請、19インチのアロイ・ホイールに組み合わせるための特別なコンチスポーツコンタクト6タイヤを製造した。
鉄製のブレーキ・ディスクには穴が開けられフロントの径は350mmまで拡大。ブレンボ製の4ピストン・キャリパーがディスクを挟む。
外観に関しては心から受け入れられるものではないが、フロント・スプリッターやリアのディフューザーはきちんと機能する。ホンダいわく抗力係数も基準車とほとんど変わらないのだそうだ。