ホンダ・シビック・タイプR
公開 : 2015.09.30 23:55 更新 : 2017.05.29 19:09
■インテリア
“窓の開閉音が耳につく。些細なことではあるがフォルクスワーゲン・ゴルフRは、そんな音を発しない” ― ニック・カケット(ロードテスター)
ウインド・トンネルのなかにシビックを置き、理想とするフォルムを得たとホンダは声高に主張するが、キャビンに関してはちっとも改善されていない。
ごちゃごちゃとしたダッシュボードに鬱陶しいスイッチ類、疑問だらけのプラスティック・トリムなど、標準モデルからほとんど変わっていないのはいかがなものだろう。
一方のシートのサポートは加点ポイント。ただしホンダが主張するほどヒップ・ポイントが下がっていないのは残念だ。ガソリン・タンクの位置がこういった問題を引き起こしている。
後席周辺は基準車と同じ。したがってタイプRらしいのはシート、ステアリング・ホイール、ギアノブくらいのものなのである。
ギアノブは先代の方が握りやすいと感じるがこれまでのタイプRと同じように削り出しのアルミ製。他には最新のインフォテイメント・システムが見どころである。
■パフォーマンス
“エンジンは優秀。悩ましいのは先代の自然吸気と比べたときである。” ― ニック・カケット(ロードテスター)
かつての2.0ℓ自然吸気VTECエンジンを搭載していたタイプRのオーナーは、エンジンそのものに少なからぬ愛情を注いでいたはず。
そんな人たちを、ターボ加給が施されるエンジンで、どれだけ満足させられるかが今回の開発でもっとも注意を払われた点ではないだろうか。
最大トルクは先代がわずか19.8kg-mであったのに対して40.8kg-mまで強化された。
フォルクスワーゲン・ゴルフRの38.7kg-mというトルクが湧きあがるのは1800rpmだが、タイプRの場合は2500rpm。そこから3000rpmまで体感的に先細りしている気配はない。あからさまなターボ・ラグも皆無だ。
ルノー・メガーヌR.S. 275トロフィーが搭載するようなミドル・レンジの刺激ほどではないが、スピードに応じた盛りあがりは実に気持ちがいい。
ただしレヴ・リミット付近の快感は先代よりも明確に劣る一方、0-100km/hタイムの5.5秒という値は前輪駆動車としては優秀な数値だといえる。
以前のような快音をとるか、速さをとるか。これまでのタイプRフリークにとっては、かなり悩ましい選択になるだろう。