ポルシェ911 GT3 RS
公開 : 2015.08.25 23:50 更新 : 2017.05.29 19:04
■パフォーマンス
“中回転域のトルクが欠ける4.0ℓフラット6は、それ以外の回転域でいかにも硬派な、そしてヒリヒリするようなパワー・デリバリーを披露する” ― マット・プライヤー (ロードテストエディター)
まずは内製のPDKデュアル・クラッチATに関して。そう、GT3と同様RSのドライバーズ・シートにも結局のところ3つのペダルが並ぶことはなかったのだ。
しかし、軽量化を施すことに必死になったポルシェがあえて重量のかさむトランスミッションを用いたのにはもちろんわけがある。
まず第1に、PDKを組み合わせることによって0-100km/hタイムは3.3秒(公表値)を実現した。今回のテストの平均値も3.3秒だ(2名乗車、燃料満タン)。
先代のRSが3.9秒、現行GT3が3.5秒であるから、たしかなる進歩を遂げたことになる。もちろん変速は機械がおこなってくれるから、簡単にマークできる数値だ。
たしかに優秀であるが、クラッチ・ペダルがなくなったことによる運転のおもしろさの欠如はいかなるものか……と嘆くことなかれ。
ポルシェはもちろん、そのへんのことも考えている。
両側のパドルを同時に引けばニュートラル状態になる。好みの回転を合わせて、もう一度パドルを弾けば瞬時にギアがつながる。選択の余地が残されているのだ。これはコーナリング時にも役立つ。
もちろんマニュアル車を運転するのとは訳がちがうが、RSにおいては楽しさは削がれていないと感じる。同時にこれほど素早い変速は、もう人間技ではムリだろうと感じた。
続いてエンジン。スーパー・スポーツカーのマーケットのなかでRSほど優れたエンジンを探すことはムリである。疑いようがない。
自然吸気にして、この前テストしたばかりのツイン・ターボを載せたメルセデス-AMG GT Sと同じ速さで160km/hに達することができる力強さがあるのだ。
しかしながら、パワー供給はドラマティックだし、突き抜けるような快音を奏でてくれるのだが、ミドル・レンジのトルクは十分とは言いがたいのは事実だ。
一方のスロットル・レスポンスはまったくもってセンセーショナル。絶対的なトルクこそ先述のようにターボより控えめだが、その積みあげ方もすばらしい。
カーボンセラミック・ブレーキも頼り甲斐がある。もう少し細やかなペダル操作でも制動を調整できるようになればいいのだが、制動力にはケチのつけようがない。
今回もMIRAハンドリング・サーキットにて、かなりの周回を重ねたが、フェードの兆しすら看取されなかった。
113km/hからのフル・ブレーキング時、完全に静止するまでに40mも要さないことからも、その実力が伺えるはずだ。