ベントレー・ベンテイガが正式公開。詳細&インタビュー
公開 : 2015.09.09 22:50 更新 : 2017.06.01 02:05
来週開催されるフランクフルト・モーターショーに先立って、SUVマーケットのトップ・モデルにあたるベンテイガが公開された。
ベントレーの言葉を借りると “最速かつもっともパワフルでラグジュアリーなSUV” となるこのクルマは、“世界最高水準のインテリア” あるいは “比類なき高級感” ということになる。
販売開始予定は来年。価格は約£130,000(2,406万円)からとなる見込みである。ベンテイガの販売により、ロールス・ロイスやランボルギーニ製SUVの開発も刺激するに違いない。
ベンテイガは、レンジローバーのトップ・グレードよりもさらに£30,000(555万円)ほど高価だということになる。ビスポークの装備がたっぷりと用意されているゆえだ。
サイズや価格はかなりのものだが、ベントレーは敢えてベントレーのなかでフラッグシップとはしておらず、その立場は引きつづき£225,000(4,164万円)のミュルザンヌが担う。
ベンテイガに対してベントレーは、高級感とともに実用性と走破性、さらに耐久性を強調している。
「これを買ったとしてもオフロードに突っ込む人はいないでしょう」と語るのはロルフ・フレッヒ。「ただしオフロードでのパフォーマンスがどれほどのものであるかはユーザーにとって重要です」
フレッヒは10万km以上に及ぶテスト態勢を構築。ベントレーにとってはもっともタフなテストであり、難しいコンディションをテストするために5台のプロトタイプを用意したという。「確固たる実力を証明するためです」
ボディとシャシー
2012年のジュネーブ・モーターショーで公開されたコンセプトと比べるとデザインそのものは大きく変わっている。
最終的にはより低く、よりベントレーらしくなっている。全長は5.14m、ホイールベースは約3mとなり、レンジローバーのLWBモデルよりもわずかに長い。しかしルーフはベンテイガの方が約60mm低く、デザイナーは “このおかげでよりベントレーらしくなっている” とコメントしている。レンジローバーと比べるよりも、ポルシェ・カイエンと外観を比べてほしいようだ。
プラットフォームはVWグループの新型MLB-エボを使用しており、これは新型のアウディQ7やもうすぐ発表予定の新型カイエンと共通するもの。
コンストラクションはアルミニウムとなり、ボディサイドは現在の産業のなかでもっとも大きなアルミ・プレス・パーツになるという。ボディ・パーツは鉄とコンポジット、アルミニウムを使用。機能によって使い分けているのだそうだ。
サスペンション
コンピューター制御による最新式のエア・スプリング・システムを採用。車高、ダンピング、ロール・コントロール、スタビリティ、トラクションなどを路面状況に応じてセンター・コンソール上のロータリー・コントローラーから変えられる。オンロード用に4モード、オフロード用に4モードから選べる。
なかでも革新的なのは、即応性のある48Vアンチロール・システムであり、路面状況に応じて前後のロールを即座にコントロールする。ハードなコーナリング時や高速道路の走行時のスタビリティを増す仕組みだ。
ベンテイガは、大型の物体を引っぱることを真面目に考えたクルマでもある。トレーラー・アシスト機能は、リバース時に、トレーラーと車体同士の最適なアングルを導きだすものである。スタビリティ・システムは、トレーラーが左右に揺れはじめた際にブレーキをかけたりエンジンのトルク供給をやめたりする。
ステアリングには電気アシスト・システムを採用。速度に合わせてステアリングのギア比を変更する。また、電制ディファレンシャル・ロックは、ブレーキ制御によりホイールスピンを穏やかなものにする。
エンジンとトランスミッション
ローンチ時、ベンテイガは新型のW12ツイン・ターボ・ガソリン・エンジンのみを搭載する。こちらのユニットは効率を11.9%高め、重量は30kg軽くなっているとのことだ。従来よりも24%短くなっており、ベンテイガのパッケージングにも寄与している。
最高出力は608ps/6000rpm、最大トルクは91.7kg-m/1250-4500rpm。組み合わされるトランスミッションはパドルつきのZF製8速オートマティックとなり、4WDシステムはトルセン・センター・デフをフィーチャーする。
標準グレードは20インチのホイールを履くが、21インチと22インチも選択可能。ベントレーいわく、ディーゼルとプラグイン・ハイブリッドのモデルも後から公開する予定なのだそう。ハイブリッドが採用されれば、ベントレー史上初となり、中国では大いに受けるはずだ。
スポイラーが追加される、ハイ・パフォーマンスのW12ユニットを搭載するモデルは ‘スピード’ と呼ばれる見込みであり、既にノルドシュライフェでテストしている光景も目撃されている。
あたらしいW12のモデルにはストップ-スタート・システムがつき、効率向上のためにシリンダー休止機構も組み合わされる。3速以上/3000rpm以下で気筒休止、トルク量も1/3に抑えられるのだそうだ。
さらに ‘sail(=帆走)’ モードも採用される。これは5〜8速の間でアクセル・ペダルを離さえば、トルク・コンバーターが接続を止めるもので、いわゆるコースティング機能と同じものだ。坂道を下る時などに役立つ。
パフォーマンス
ベントレーいわく、最高速度は301km/h、0-100km/hタイムは4.0秒となる。2422kgの乾燥重量を考えれば驚くべく数字だといえる。フレッヒいわく、これらの数値は40℃の環境下で得られたもので、いかに冷却高価が優れているかもわかる。
CO2エミッションは292g/kmとなり、先代のW12よりは改善されているが、大幅な進化とはいいがたい。複合サイクル燃費は7.8km/ℓとされ、ベンテイガが87ℓものタンクを必要とする理由はここにある。
インテリア
キャビンには高品質のマテリアルを使用しており、メタルに見えるものは本物のメタルといったように、本物の素材にこだわっている様子。たっぷりとした選択肢が用意されているのも魅力だ。
インテリア・デザイナーに課されたミッションは、その他のSUVのインテリアの基準をまったく新しいレベルに塗り替えるというものだったのだそうだ。
サーフェスはベントレーのエンブレムにもあるウイングを基調としている。浮きあがるように表示されるドライバー・インフォ・パネルやメタル・メッシュの向こう側のスピーカー・グリル、スイッチ、22に及ぶシートの調整機構も特徴である。
後席には2、3人が座ることができ、大型のラゲッジを搭載するためにリア・シートを倒すこともできる。7シーターも追加される予定だ。
ローンチ詳細
英国のディーラーは既にベンテイガの受注を開始しており、1年に3000台の販売台数が期待されている。その後は年に10,000台が製作できればと考えているようだ。
最初のカスタマーは、来年初頭に手に渡るようだ。
プロジェクト・ディレクターのピーター・ゲストとの一問一答
プロジェクトが発足当初から一任されていたのですか?
「その通りです。当時、戦略部隊は今後の計画拡大をどうしたものかと思い悩んでいたのですが、その当初からCEOとともにSUVを追加することがもっとも手堅いことなのだと思っていました」
壁に当たったことは?
「まずはじめに正直に言わせていただくと、ベンテイガの企画ほど怖いものはありませんでした。9年にわたりボディやトリム部門のチーフを務め、たくさんの技術プロジェクトを率いてきましたが、ベンテイガの規模になりますとね……」
ベンテイガを簡単に説明するとしたら?
「プロジェクトに着手したときから ‘実用性と高性能を担保しながら、最高峰の高級感を打ちだす’ というのがわれわれの共通認識でした。これは今もまったく変わっていません」
開発期間、驚いたことはありましたか?
「私が思うに2つあります。まずはこのプロジェクトの知名度です。ベントレーは決して大きな会社ではありませんが、どこに行けどもベンテイガに関する意見をもちあわせている人が多かったですね」
「そして第2に、プロジェクトそのものの楽しさが、当初の予想を大きく上回っていたことです。先述のようにプロジェクトに規模は大きかったのですが、20人の有能なチーム・メイトと政府の援助によって、心からプロジェクトを楽しめました。とても幸運なのです」