断っておくが、乗り心地はかなり硬質である。ノーマル・モードではかろうじて耐えられるのだが、スポーツ・モードでは明確にアスファルトの凹凸が伝わってくる。

たしかに反応は機敏であり、高速域ではこれ以上ない喜びを与えてくれるの一方で、長距離の移動はとびっきり疲れてしまうことになるだろう。

角がとれたグランド・ツアラーと思う事なかれ。タイヤ・ノイズはゴーゴーと響くし、強調されたエグゾースト・ノートのおかげで 「ごめん、いま何ていった?」とパッセンジャーに聞き返すことも少なくない。

一方、もっとも重要なのは3.8ℓの自然吸気フラット6がお尻に収まっている点だ。キーを捻ると喉音が響き、アイドル時はバリトン・ボイスが低く唸る。2500rpmを超えたあたりからは音に深みが加わり、レッドラインに向けて猛烈な雄叫びに変わりゆく。自然吸気であるにもかかわらずトルクは頼り甲斐がある。エンジンだけでも購入動機になるほどの名機だといえる。

PDKは少しももったいぶることなくエンジンの美味しい回転域にレブ・カウンターを当てつづける。機械任せにしておけば、控えめな回転数に抑えたまま物静かな走行に徹する。

燃費向上のために必要に応じてクラッチの接続を遮断するコースティング・モードが備わっており、接続時にたまに待ち時間があったり、エンジン・ブレーキに不足を感じることもあるが、全般的には機敏な動作を行う。

グッとアクセルを踏みこめば一気に低いギアにシフトする。2、3速の飛び超えなどなんのその。一気にレブ・カウンターは跳ね上がり、後方は大音響に包まれる。

もっとも楽しめるのがスポーツ・プラス・モードであるのはGTSも例外ではない。エンジンやシャシーのレスポンスはもっとも研ぎ澄まされ、トランスミッションは低いギアにしがみつく。マニュアル・モードを選べば、自分の求めるギアと回転数と寸分の誤差なくしかも瞬時に変速する。マニュアル・トランスミッションを選ぶ必要はないなと思っても不思議ではない。

PDKのおかげでローンチ・コントロールもまた殊のほか簡単。スポーツ・プラスにセットして、ブレーキ・ペダルを踏み、同時にアクセル・ペダルを床まで踏みつける。するとエンジンは自動的に6500rpmを維持、ブレーキ・ペダルを話した瞬間に ‘発射開始’ である。

4WDシステムのおかげでトラクションにも不満はない。ささやかに前輪にパワーを与えるおかげで高速道路でも不安になるようなフロントの動きが抑えられているのだ。