■どんな感じ?

既にA6にも搭載されている2.0 TDIウルトラ・ユニットに対する不満はまったくない。1500rpmに及ぶ前から力強い加速を見せ、1750rpmを超えても回転計の動きに引っかかりはない。追い越しの際にダウン・シフトする必要もない。

高回転まで引っ張ってもがっかりすることはないし、何より他のどの4気筒ディーゼルよりも静かなのだ。ペダルやギア・レバーからいくらかの振動は伝わるが、ATを買えばレバーに手を添える機会も減るため大きな問題にはならないだろう。

マニュアル・ギアボックスの操作感も十分に洗練されている。110km/hを超えたあたりの風切り音も驚くほど落ち着いている。外部の音を遮断するためのガラス(オプション)も満足に足る仕事をおこなってくれる。

徹底的なダイエットの結果、最高で120kgも先代より軽くなっているおかげで運転の楽しさも増している。明らかに身のこなしは軽やかで、向きを変えることをクルマ自体も喜んでいる様子だ。

ただ、ひとつ明らかにしておかなければならないことがある。身のこなしが軽やかといえども、BMWやジャガーほどではないという点だ。あくまでおしとやかに、されど重ったるくなく、といったところである。

ステアリングには依然として不満がある。手元に伝わってくる情報量は希薄だし、必要以上に重すぎる。電気システムの恩恵は受けていないといえるだろう。それに3シリーズやXEほど精緻な感覚もない。他のライバルで試したコーナーに差し掛かればロールの大きさも気になる。

一方のグリップ・レベルは高く、全体として落ち着いた印象は高速道路をまっすぐ走る際の姿勢に好影響をもたらしている。高速道路上であれば乗り心地に関しても加点ポイント。継ぎ目や凹凸は見事に吸い込み、縦方向の不用意な動きも最小限なのだ。

サスペンションのセットアップは全部で4種類。Sラインのモデルはスポーツ・セットアップゆえ足はいくぶん硬く車高も23mm低い。コンフォート・モードも標準のコンフォートより10mm車高が下がっている。