アウディTTS クーペ

公開 : 2015.09.14 23:50  更新 : 2017.05.29 18:14

ただ、それなりの路面で本気でムチを入れたときの安定感とイージーな速さは、確かにすごい。乗っている人間には苦行でも、クルマそのものは跳ねないし、進路もピタリと安定している。レーシングカートのような上屋が微動だにしない安定感に気を良くして、アクセルを無遠慮に踏んでも、アンダーステアに手を焼くケースはほぼ皆無だ。

新型TTでは油圧多板4WDの制御をより精密かつアクティブにした……というのも売りだが、たしかにその効果は感じられる。これまでは完全な黒子に徹していた4WDが、新型ではグイグイと積極的に後ろから押し出してくれるのがはっきり分かる。最大でも後輪優勢配分になるわけではないので、さすがに「後輪で曲がる」というレベルまでは達していないが、優秀なブレーキLSDも相まって「踏んで曲がる」クルマではある。

■「買い」か?

これだけ低く、速いのだから、なるほど本格スポーツカーと呼んで差し支えないデキだが、このあまりにガチガチの乗り心地には「Cセグメントのハードウェアでケイマンに果たし状を叩きつける」というTTSのコンセプトそのものに、どうにも無理を感じてしまうのは先代と同じだ。

似たようなハードウェアで構築されるゴルフRが驚異的に快適なオールラウンダーであることを考えると、それより軽量・低重心なTTSを同じようなコンセプトで仕立ててれば……と想像したくなる。しかし、それでマニア筋から「ケイマンよりヌルい」だの「Z4より旋回性能が低い」と評されては、TTそのものの存在意義が薄れると、少なくともアウディは考えているのだろう。

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