ポルシェ911カレラS (助手席インプレッション)
公開 : 2015.09.14 23:40 更新 : 2017.05.29 19:04
いわばポルシェのランドマークともいえる911カレラは、初めてターボ加給を受けるフラット6を搭載することとなった。テスト・ドライバーとともに新型を試す。
私はほっとした。あたらしいエンジンを搭載する911カレラSのサウンドは、まったくもって味気ないものではなかったからだ。
ゆっくり走るときや高速巡航時は、たしかに先代よりエンジンのトーンはフラットではあるし、自然吸気のような鋭敏さに欠けるとも感じるが、しかるべく速度に達するとあいかわらず雄々しい音をまき散らしている。
周りを見わたせば、ダウンサイジング一直線の最中、やはりポルシェだって、いつまでも独自の道を進むわけにはいかなかった。3.8ℓの自然吸気から3.0ℓのターボ・エンジンにしたことがその結果である。
けれども、あの壮麗でどこか無骨なサウンドトラックも911の魅力として重要な立ち位置を占めている(いた)だけに、‘ターボ化’ したことに理解ができないという向きも少なくないはず。しかし、少なくとも無骨さはスポイルされていない。それにあたらしい911は、これまでのどの(素の)911よりも0-100km/hタイムが短く、最高速度もあがっているが、エコノミーの観点でも先代より優れている。
ターボ・エンジンの搭載をポルシェが決心したのは4年前のことだという。主流スポーツカーにも容赦なく課されるであろうCO2排出量規制に対応するためであることはいうまでもない。その際、同時に、 ‘されど、911らしさは力を尽くして守りぬこう’ と決めたのだそうだ。
ポルシェは排気量を小さくし、ターボ加給を施すことを ‘ダウンサイジング’ とは呼ばずに ‘ライトサイジング(=サイズの適正化)’ と呼ぶことを好んでいる。2981ccのツイン・ターボ・フラット6は、あくまで ‘正しいサイズ’ なのだと。
公の場に披露される準備も整っている。ポルシェが舞台に選んだのは、明日から行われるフランクフルト・モーターショーである。これにともない、ポルシェはホッケンハイム・サーキットにて実走行の機会を設けた。わずかながらに偽装が施された左ハンドルのプロトタイプだった。
われわれを歓迎するかのように、ピットレーンに並んだ911は運転席側のドアをあけ、キーも用意されていたが、実際の運転は今回にかぎり許されなかった。
そのかわりに、ポルシェのテスト・ドライバーがサーキットを周回し、われわれを助手席に乗せてくれることを許してくれた。木村好宏が2月に同乗テストを体験した際と大体おなじ用件である。もちろん当時より開発は進んでいるし、メカニカルな観点でみても進捗はかなりのものであったけれど。
テスト車にはオプションのスポーツ・エグゾーストが装着されており、テール・パイプは真ん中から少し外側にそれぞれ2本ずつ顔を見せていた。標準の場合は、後部外側からそれぞれ1本ずつの2本となるのだそうだ。
ターボ加給を施すことにより、これまで以上に冷却効果を高める必要もあった。リアのエアフロー・システムは根本から見なおされ、あらたにリア・スポイラーの前方から空気を吸い込むチャンネルも用意したという。また、燃焼機関とインタークーラーに流入する空気の量を増やし、バンパー底部から空気を逃がすようにしている。