ジャガーF-ペースの実車と数値がフランクフルトで公開
公開 : 2015.09.15 22:45 更新 : 2017.06.01 02:04
フランクフルト・モーターショーにてようやく公開されたF-ペースは、英国内では来春発売の予定。価格は£34,170(635万円)からとなる。
F-ペースはジャガーの70年の歴史のなかで初のSUVであり、XEとともに今後のジャガーを盛り上げるための重要なモデルである。
両者は、去年の81,000台という販売台数から200,000台まで引き上げる手助けになるかもしれない。XEよりもF-ペースの方が世界的に多く売れるのではという見方もある。
ベースとするモジュラー・アルミニウム・プラットフォームはXEとXFで共通。ターゲットとする顧客層はBMW X3、ポルシェ・マカンなどのミドル・サイズのプレミアムSUVを好む人々である。
全パーツの81%はF-ペースのために新しく作り直しており、ボディの80%はアルミニウム製。ホワイト・ボディの重量はわずか298kgとなり、フィアット500Lと同じ数値である。
テールゲートはコンポジット、フロント・エンドとキャリアはマグネシウム性、ドアはスチール製となる。
グレード展開は最も燃費の優れるディーゼルから、F-タイプと様々な要素を共有するパワフルなグレードまで幅広い。
外観は2013年に公開されたC-X17と似ている部分も多い。SUVの生産は2012年頃から計画されていたのだそうだ。
XEとXFのあいだのサイズであるF-ペースの全長は4731mm、全幅は1936mm、全高は1652mm。ホイールベースは2874mm、最低地上高は213mmとなる。
BMW X3よりもわずかに長く、ホイールベースも同様。実用性もほとんど同じと考えてよさそうだ。
ローンチ時のエンジン展開は1機のガソリンと2機のディーゼル。後輪駆動と4WDの2種が用意され、トリム・レベルは5種となる。前後重量配分は50:50だ。
エントリー・グレードは181psと44.0kg-mのディーゼルを搭載しており、排気量は2.0ℓ、気筒数は4つ。XEとXFで共通のものだ。6速MT×後輪駆動の組み合わせとなる。燃料消費率は20.4km/ℓ、CO2排出量は129g/km。0-100km/hタイムは8.5秒、最高速は18.0kg-m。エンジンは4WDのモデルにも搭載可能であり、8速ATはオプションとなる(英国仕様)。
V6のディーゼルとガソリン・モデルも用意される。両者ともに8速AT×4WDという組み合わせであり、ディーゼル最高出力は300ps、最大トルクは71.3kg-mとなる。0-100km/hタイムは5.8秒、最高速度は241km/h、燃料消費率は16.7km/ℓ、CO2排出量は159g/kmとなる。
ガソリン・エンジンのV6はF-タイプと共有するもので、スーパーチャージャーによる助力を受ける排出量は3.0ℓ、最高出力は380ps、最大トルクは45.9kg-mとなる。ポルシェ・マカン・ターボに当てられたグレードであり、マカン・ターボのV6は401psを発揮、0-100km/hタイムは4.8秒となる。
ジャガーはSVRのバッジをつけた、5.0ℓ V8版も示唆している。
F-ペースのフロント・サスペンションはダブル・ウィッシュボーン、リアはインテグラル・リンクを採用。XEやXFでも見られるアルミニウム製のもので、電制パワー・ステアリングも共通。
乗り心地やハンドリングは同クラスで最もハイ・レベルなものになるのだという。
トルク・ベクトリングや電制可変ダンパー、数々のドライビング・モード、スロットル・マップ/トランスミッションの変速スピード/ステア・フィールを変更できる数々の装置がジャガーの自信に繋がっている。
4WDシステムはF-タイプから借り受ける。インテリジェント・ドライブ・ダイナミクスと名付けられたリア・バイアスのシステムはオンロード上のダイナミクスとトラクションを底上げするとともに、ランドローバーに匹敵するオフロード上のアビリティを実現するとのこと。しかるべきコンディションでは全トルクの50%を前輪に与える。
オフロードの性能は、アダプティブ・サーフェス・レスポンス・システムとも繋がっている。ランドローバーのテレイン・レスポンス・システムと元にしてこれは、マッド/グラベル/雪道などの滑りやすい路面で真価を発揮する。オール・サーフェス・プログレス・コントロールやロー・フリクション・ローンチ・システムもキーとなる。
この他にはステレオ・カメラによる自動緊急ブレーキ・システムや歩行者保護などの先進システムも組み合わされる。
キャビンは5人の大人にとって十分なスペースが確保されており、ストレージ・スペースもたっぷりと確保される。USBソケットや12Vの充電ポイントが数個用意されるのもポイントだ。
リアの膝周りのスペースはトップ・クラスであり、荷室容量は後席を立てた状態で650ℓ、倒した状態で1740ℓに及ぶ。スタンダードな後席は60/40に分割でき、40/20/40に分割できるシートも選べる。シートを立てた状態の荷室容量はBMW X5と同等である。
8.0インチのタッチスクリーンとインコントロール・インフォテインメント・システムは標準。アップグレード版であるインコントロール・プロ・システムと10.2インチのタッチスクリーンはオプションとなる。この他にも8機のデバイスを同時接続できるWi-Fiホットスポットも用意されている。
12.3インチのデジタルHDメーターは速度や走行距離を表示。3Dナビゲーション・グラフィックも設置される。ヘッドアップ・ディスプレイにはナビにセットした目的地までの進行方向や制限速度を表示する。どのクルマよりも大きいパノラマ・ルーフも見どころだ。
£34,710(645万円)のプレステージは、電動調整可能なレザー・シート(ヒーター付き)や18インチ・アロイ・ホイール、電動テールゲート、前後パーキング・センサー、衛星ナビ、Wi-Fiスポット、分割可能なリア・シート、坂道発進アシスト装置が標準。
R-スポーツは£36,670(681万円)、ポートフォリオは£39,170(728万円)、トップ・レンジのSは£51,450(956万円)となる。
他の興味深いシステムとしては ‘アクティブ・キー’ と呼ばれるものがある。こちらは防水のリストバンドであり、たとえば水辺のスポーツのあとにキーを使わずにエンジンを掛けることができる。またリストバンドをつけておけば、キーは車内にあってもジャガーのバッジを押せばロックの開閉ができる。
ローンチ時、ジャガーは装備が豊富なファースト・エディションを用意している。V6ディーゼルを搭載したこのモデルはSをベースにしており、リクライニング可能なレザー・リア・シートや22インチのアロイ・ホイールを組みあわせる。
これまで、低く伸びやかなデザインを得意としてきたジャガーにとって、ジャガーらしさを損なわずにSUVをデザインすることは難しかったという。すべてはSUVを欲する顧客のためだったのだそうだ。
XFと共通する部分を意図的に残しているのは、ジャガーのスピリットとスポーティネスを強調するためなのだそうだ。
組み立てはジャガー・ランドローバーが所有するソリフル向上で行われ、£120,000,000(222億円)もの投資を受けているのだそうだ。
ビークル・プログラムのディレクターであるアンディ・ワイマンいわく、開発の初期段階ではポルシェ・マカンを参考にしたとのことだ。「マカンがいかなるものかを知るために、かなり長い時間をマカンと過ごしました」
また「われわれのデータと照らし合わせることによって明らかになったのは、ポルシェはダイナミクスとハンドリングを重要視しているということです。これに加えて実用性とカスタマーを魅了する価値観を付加したクルマがF-ペースだということになります」
高速巡航時にはマカンよりもかなり静かなうえ、ドバイの砂漠にも飛び込んでいけるというのがF-ペースの売りである。
デザイン・ディレクターのイアン・カラムは「私がデザイナーとして職務についたのは、もうかなりの前のことで、その時点から時代は大いに変わりました。けれども、傾向はさらに変わりつつあります。特にアメリカ、中国は決して無視できるマーケットではなくなりましたね」と語る。
「あたらしいアーキテクチャが生まれれば、それを元にデザインを積みあげていきます。ジャガーのつくるSUVがどんなものであるべきかを真剣に考えるのです」
「F-ペースをつくるうえで、サイズ選択は簡単でした。アウディQ3のサイズだと小さすぎるし、レンジローバー・スポーツは大きく見えすぎます。このようにしてバランスを重視しながらゆとりをもって5座を据えられるようにしました」
カラムは7シーターの存在は否定したが、ハイ・パフォーマンス・モデルに関してはコメントしなかった。
デザイン・ディレクターのイアン・カラムとの一問一答
F-ペースのデザインを開始したのはいつですか?
「3〜4年前です。次世代モデルのためのアーキテクチャーを開発した時です。プランが浮上した時からクロスオーバーを作る計画はありました」
まずはじめにどう思いましたか?
「正直に申しあげると懐疑的でした。私の思い描くジャガーは、低く伸びやかなものですからね。しかしカスタマーと話すほどに考え方が変わりました。カスタマーはSUVを望んでいたのです」
その際、カスタマーと議論は?
「幾度となく行いました。おかげでどのようにすべきかを明らかにできました」
大きなハードルは?
「まず最初にディメンションにこだわりすぎていた節がありました。そこでドラマティックさを優先させ、F-タイプのシェイプを取り入れたいと思いました。おかげでクロスオーバーであってもジャガーらしさを損なわずに済みました」
C-X17コンセプトはどのような影響を?
「製品化を優先しなかったぶん、自由にデザインすることができました」
いよいよジャガーのファミリー・グリルができましたが?
「計画どおりです。世界を見わたせばまだまだ認知度が高くなかったジャガーにとって、ひと目でジャガーだと気づいてもらえる必要がありました。その点ファミリー・グリルは有効です」
F-ペースで最も誇りに思える点は?
「彫刻的なボディ表面です。また、特にリアの3クオーター・ガラスに惚れ込んでいます。しかしルーフラインを押し込むのには苦労しました。ただF-タイプらしさを加えるには大事なことですからね。大げさなことをせずに、ドラマティックなクルマであることは間違いありません」
英国版AUTOCAR編集長、スティーブ・クロプリーのコメント
ジャガーのように歴史が長く、揺るぎない顧客を抱えるメーカーであれば、これまでに築きあげてきたものから新たなものへと考えをシフトすることは難しい。
しかし “スポーツ・クロスオーバー” という新たなジャンルはジャガーにとって、これ以上ないチャンスとなった。
だからこそ懐疑的であったイアン・カラムはF-ペースの生産に前向きになったのである。F-ペースはジャガーのなかで最も売れ、なおかつジャガーの歴史上最も売れるものになるだろう。
カスタマーにとってもF-タイプの購入は好機になるはずだ。多くのカスタマーはより実用的になったF-ペースを気に入るだろう。F-タイプのデザインとバリュー、パフォーマンスを大いに引き継いだモデルであることは間違いないのだから。