ウィンターコルン辞任、そして次のCEOは

公開 : 2015.09.24 22:50  更新 : 2017.06.01 02:04

一連のエミッション・スキャンダルを受けて、フォルクスワーゲン・グループのCEOを務めていたマーティン・ウィンターコルンはその職を辞することを発表した。

今年は初めにポルシェの創業ファミリーのひとりであったフェルディナンド・ピエヒをフォルクスワーゲン・グループから激しい権力闘争の上に退け、また、今年前半の売り上げで生産台数に置いてトヨタを抜いてNo.1の座を獲得したばかりのことだった。

68歳となるウィンターコルンの辞任は、23日の朝に菜彩された取締役会最高会議幹部間で認められた。このボード・メンバーは、VWグループの議長、ベルトルト・フーバー、ニーダーザクセン州知事のシュテファン・ヴァイル、フォルクスワーゲン・グループの個人としては最も多くの株を保有するウルフガング・ポルシェ、そして2人の労使協議会のメンバー、バーンド・オスターロー、シュテファン・ウォルフから構成されている。

ウィンターコルンからの公式声明は以下の通り。「フォルクスワーゲン・グループがフレッシュなスタートを切ることができるよう私は退任する。私自身、ここ数日に起こった出来事に非常にショックを受けており、そのような不正行為があったことにも驚かされている。不正行為について私は認識していなかったが、監査委員会には私がフォルクスワーゲン・グループのCEOを辞することで責任をとることを申し出た。フォルクスワーゲン・グループは新たなスタートが必要で、私の辞任がきっかけのひとつとなればいいと思う。私の人生は、常にフォルクスワーゲンのユーザーと従業員のためにあったことは確かだ。今後は、この問題の解決する過程をしっかりと明確にすることが必要だと思う。それが、フォルクスワーゲン・グループの信頼を取り戻すためには重要だと思っている。」

暫定のCEOに就任したベルトルト・フーバーは、「ウィンターコルンは、本当に一生懸命フォルクスワーゲンのために尽くしてくれた。無用な混乱を避けるためにも、今週金曜日には後継者を発表したい。」と述べた。

後継者は誰か

ウィンターコルンの辞任によって、フォルクスワーゲン・グループは新しいリーダーを直ぐに選出しなければならない事態に陥った。世界最大のメーカーを率いる新しいリーダーが誰になるのかは非常に興味深い話題だ。フォルクスワーゲンが自身のグループから選ぶことも可能だし、異なったブランドから選出することも可能だ。2007年にウィンターコルンがベルント・ピシェッツリーダーからその職を受け継いだ時には、ウィンターコルンはアウディのCEOであったことを思い出して欲しい。

マティアス・ミューラー
最も有力なのは現ポルシェのCEO、マティアス・ミューラーだ。彼はフォルクスワーゲン・グループのお気に入りのメンバーでもある。彼は1977年にアウディに入社。その後、プラニング・デビジョンに入る前には、IT部門で働いていた。ミュラーは、その関わった製品において非常に良い結果を残している。アウディA3のマネージャーを勤めた後に、1995年、アウディ全体の製品責任者となった。現在62歳。ウィンターコルンは、2002年にアウディとランボルギーニの製品責任者に据え、2007年にウィンターコルンがCEOに就任した時点で、ミューラーはフォルクスワーゲン・グループのすべての製品戦略の責任者となった。2010年以降、ミューラーはポルシェのCEOになったが、面白いことに関係筋は彼が毎週火曜日にはシュツットガルトではなくウォルフスブルグで過ごしていることが多いという。

ルパート・シュタドラー
現アウディCEOのシュタドラーも有力な候補のひとり。彼の成功はデザインやエンジニアリングというよりも、ビジネスとコマーシャルで成し遂げられたといってよい。バイエルンの農民の息子であったシュタドラーは、フィリップスでその経歴をスタートしているが、ビジネス・マネージメント、とりわけファイナンスとプラニングに重点を置いて勉強をしたという。1997年にフォルクスワーゲンの議長になり、2002年まで製品計画の大きな責任を持つこととなった。52歳の時、彼はアウディの専任となった。そして2010年にその最高責任者となっている。

ウィンフリート・ヴァーランド
スコダのCEOは現在58歳のウィンフリート・ヴァーランドだ。しかし、彼のバックにはどんな人物がいるかどうかは明らかでない。彼は生粋のフォルクスワーゲン・グループではないということが、ミューラーやシュタドラーとは異なるところ。彼はGMでそのキャリアをスタートし、1984年にはプロジェクト・アナリストとしてオペルに加わっている。その後、GMヨーロッパで製品戦略担当となり、1990年にコントロール・ディレクターとしてアウディに転籍した。彼の強さは世界各地での経験だ。彼はブラジルのフォルクスワーゲンで働いた経験もあり、中国でも5年間の経験がある。2010年にスコダのCEOになり、現在2020年までに150万台を販売するという計画のゴールに向けて突き進んでいる最中でもある。

ハーバート・ディエス
フォルクスワーゲン・グループ生粋ではない有力人物のもうひとりがハーバート・ディエスだ。彼はフォルクスワーゲンのマネジメントに極く最近に加わった人物。彼はBMWからこの7月にフォルクスワーゲンの乗用車部門の取締役として招かれたばかりだ。彼は、1989年に故郷のミュンヘンでボッシュに入社している。そしてスペインのトレトへ転勤し、その後、1996年にBMWのディレクターとして入社している。製造工程について深い知識を持つ彼は、1999年にはローバーの、そしてその後にはミニの工場に関わった。2003年にはBMWのモーターサイクル部門のディレクターとなったが、2007年には購買供給部門のマネージャーに、そして2012年には総合研究所に移籍している。56歳にしてフォルクスワーゲン・グループに加わったという彼を新しいCEOにする可能性は少ないと思われる。しかし、ウィンターコルンの「フレッシュなスタート」という言葉が影響する可能性もある。

アンドレアス・レンシュラー
57歳のアンドレス・レンシューラーは、エンジニアリング畑出身で、現在はフォルクスワーゲンの商用車部門のトップである。彼はスカニアとMANを統合した手腕を持って、現在はフォルクスワーゲン、アウディ、スコダのバランスを管理している。彼のキャリアの多くはフォルクスワーゲンではなく、ダイムラー・ベンツで過ごしているので、フォルクスワーゲンには比較的最近参加した外様の一人でもある。彼のメルセデスでの功績は、最初のMクラスにはじまり、スマート・ディビジョンの構築などがある。また、アジアとアメリカといった ‘地方’ の経験もある。ダイムラーのトラックとバスのディビジョンを最後にダイムラーを放れ、2014年1月にフォルクスワーゲンでのキャリアをスタート。そして今年の2月に商用車部門のトップに就任している。

如何にして無効化機能を動作させたのか

アメリカ環境保護局(EPA)が、フォルクスワーゲンが如何にしてエミッション・テストを検知し、それを非合法にクリアするコンピューター・ソフトウェアで電子制御モジュール(ECM)を操作したか、つまり無効化機能を働かせたかを発表した。

EPAは、ECMにローラー式の模擬道路でエミッション・テストが行なわれているかを察知するスイッチがあったという。このスイッチはエミッション・テストを受けていることを、ステアリング・ホイール、スピード、エンジンの動作状態、気圧などといったパラメーターを察知すると、テストをクリアするようなコントロールを行う命令を出す。EPAは既にこの無効化機能が働かない状態でNOx(窒素酸化物)の測定を行ったが、その場合NOxの値はEPAの定めた基準を上回り、10倍から40倍の数値をマークしたという。

過去から指摘されていたVWのエミッション問題

実はフォルクスワーゲンの今回のエミッション・スキャンダルは、2014年5月から問題視されてきたことだ。その経緯をおっていこう。

2014年5月
ウエスト・バージニア大学(WVU)の代替燃料、エンジン及びエミッション・センターは、2012年のジェッタ、2013年にパサートという2台のディーゼル・モデルから、公表されているよりも高いエミッションを察知したと公表した。同時にテストしたBMW X5はテストにパスしている。WVUはEPAおよびカルフォルニア・エア・リソース委員会(CARB)に警告を発してる。

2014年夏
この発表を受けたフォルクスワーゲンは、EPAとCARBに、この問題は技術的な問題と予想外の使用状況に起因するものだと説明をしている。

2014年12月
フォルクスワーゲンは、エミッション問題に対応するために500,000台の回収を発表した。

2015年5月6日
EPAとCARBは、フォルクスワーゲンのエミッション・テストに追跡調査を行うことを発表する。

2015年夏
EPAとCARBは、アメリカで販売されるディーゼル・モデルのテストについて、一致証明書を発行しないことを明らかにした。

2015年9月3日
フォルクスワーゲンは、エミッション・テストをクリアするためのアルゴリズム、いわゆる無効化機能が組み込まれていたことを認める声明を出す。

2015年9月18日
EPAとCARBは、フォルクスワーゲンが2つの項目においてエミッション・テストで虚偽をしたことを発表した。

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