早速走らせてみると、これがなかなか悪くない。ベントレーのウェブサイト上で、シャンパン片手に談笑にふけるセレブリティを僻む必要もなさそうだ。

たしかにテスラのキャビンは退屈な部分がある。特にひと昔前のメルセデスを思い起こさせるレバーや、ステアリング・ホイールの仕上げなどは実際の価格とは乖離している。

しかし誰が、スターウォーズに出てくるような ‘未来のクルマ’ に乗って内装の仕立てについて細々というだろうか。スタート・ボタンさえないこの先進的なクルマには、細かな仕上げを気にさせないだけのオリジナリティがある。

それよりもむしろ、クランクシャフトやオイル・ポンプから生じる音が耳に届かない、不思議な空間に “これはこれでいいじゃないか” と思ったほどである。クルマ好きの私でさえ。

いざアクセルを踏み込んでみると、現代の移動物体では味わえないようなとてつもない加速が始まる。特にスポーティなモードにしているわけでもないのに、末恐ろしい ‘時空移動’ なのである。

タイヤが空転することもなければ、複雑なローンチ・モードがあるわけでもない。変速ショックもなければ、音さえもない。気づけば、さっきまでいた場所からは遠く離れたところにいるのである。

これはもう、文字どおり ‘異次元’ である。