ボルボV60クロスカントリー D4 SE

公開 : 2015.10.09 23:40  更新 : 2021.10.11 09:10

V60クロスカントリーには、エクステリアでも独自のフィニッシュが与えられている。V40クロスカントリーと同様に、フロント・グリルはハニカムデザインとなり、さらに前後のスキッド・プレートやサイド・スカッフ・プレート、フェンダー・エクステンション、ドア・ミラー・カバー、サイドウインドウ・トリムなどもブラック・カラーで統一されたため、エクステリアから受ける印象はさらに精悍で力強いものになった。インテリアのデザインはV60のそれと共通。オプションでは専用のステッチやカラー・コーディネイトが楽しめるスポーツ・シートの設定もある。

■どんな感じ?

今回試乗したのは、ボルボのクリーンディーゼル・モデルとしては日本市場では第6弾モデルとなるD4 SE。ガソリン・エンジンを搭載するT5 AWD SEとの価格差は前でも触れたとおりだが、日々の燃料コストや燃費性能を考えれば、日本においても主力モデルとなるのは、このD4 SEと考えるべきだろう。ちなみに試乗車は、その最もベーシックな仕様ともいえるもので、17インチ径のホイールとタイヤを装備する。235/55R17サイズのタイヤは、コンチネンタル製のマッド&スノーとなり、それによってオンからオフまで、幅拾いカスタマーのニーズに応えようという意思が表れている。

都会の景色の中にも自然に溶け込むその姿は、とかく存在感を強く主張しがちなSUVを好まないカスタマーにも、十分に魅力的に映るものだろう。実際に1540mmという車高は、あらゆるシーンで使い勝手の良さを感じさせるはず。もちろんV60のワゴンとしての機能性はなにひとつ損なわれていない。サンド・ストーン・ベージュとソフト・ベージュのコンビネーションによるインテリア・カラーは、いかにもスカンジナビアン・デザインといった印象の選択。オプションのスポーツ・シートではさらに大胆なカラー・コーディネイトも楽しめるが、個人的にはこのくらい落ち着きのあるカラーも魅力的に思える。

センター・コンソールには、スマートフォンのデザリング機能を用いることでインターネット接続を可能とした、最新のインフォテイメント・システムが備わっている。さまざまなアプリによる検索機能などは便利なことこのうえないが、ライバル車のそれと比較すると、モニターのサイズや操作性などには若干の不満が残る。日々の進化が著しい、そしてまた近年ではその性能の優劣が、大きな購入動機となるだけに、ボルボのそれには、やや出遅れ感があるのは否定できないところだ。

D4 SEに搭載される2ℓターボ・ディーゼル・エンジンは、最大トルクではT5 AWD SEのそれに対して4.1kg-mのアドバンテージがある。8速ATとの組み合わせによる加速感は実に力強く、低速域からでも十分に厚みのあるトルクを発揮するため、どのような速度域からでもアクセル操作だけで俊敏な加速を楽しませてくれる。キャビンで聞くかぎりは、ディーゼル・エンジンに特有のノイズも、非常にうまく処理されているように思える。一方車外で聞くそれは、アイドリング時でもかなりのボリュームであることは報告しておかなければならないだろう。

200mmの最低地上高を得た直接の理由であるサスペンションは、よりコンパクトでスポーティな性格を持つV40クロスカントリーのそれと比較すると、やはりラグジュアリーな印象が強い。ホイールベースが長いこともあり、走行中のピッチングも巧みに抑えられている。ワゴンとしての基本性能とともに、長時間の移動が頻繁に考えられるユーザーには、V60クラスのサイズは、やはり必要にして不可欠なものともいえそうだ。

記事に関わった人々

  • 山崎元裕

    Motohiro Yamazaki

    1963年生まれ。青山学院大学卒。自動車雑誌編集部を経て、モータージャーナリストとして独立。「スーパーカー大王」の異名を持つ。フツーのモータージャーナリストとして試乗記事を多く自動車雑誌、自動車ウェブ媒体に寄稿する。特にスーパーカーに関する記事は得意。

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