フェラーリのこれからを訊く

2015.10.26

フェラーリ488スパイダーの日本でのお披露目に際し、フェラーリ極東エリア統括マネージング・ディレクターのディーター・クネヒテル氏が来日した。今回フェラーリ・ジャパン&コリア代表取締役社長のリノ・デパオリ氏と共にインタビューする機会に恵まれた。先頃のニューヨークでのIPOを始め常に先を見ているフェラーリ社だが、これからの動向を聞いてみた。
ディーター・クネヒテル/フェラーリ極東エリア統括マネージング・ディレクター・ウイーン大学で理学士号とマーケティングの修士号を取得後シトロエン・オーストリアに入社し自動車業界でのキャリアをスタートさせる。以来ルノー(パリ、東京)を経て、2006年からはポルシェ中国で腕をふるい、2015年4月からフェラーリの現職で活躍中。 リノ・デパオリ/フェラーリ・ジャパン & コリア代表取締役社長。カナダ・ブリティシュ・コロンビア大学商学部で学士号を取得。フェラーリ入社後英国、中東、アフリカ、中国を担当した後2014年よりフェラーリ・ジャパン代表取締役社長に最年少で就任。2015年9月よりフェラーリ・コリア代表取締役社長も兼務する。
 
Q 8月ごろからアジア、中でも特に中国が減速しています。フェラーリの販売にどのような影響がありますか? ディーター・クネヒテル(DK):中国の影響はどのブランドでもあり、フェラーリも例外ではありません。フェラーリは量や売り上げだけを重視しておらず、質の向上や強いお客様の基盤に注力しています。中国の成長が鈍化していることは、フェラーリとしてはあまり問題とは思っていません。なぜならフェラーリは常に成長してゆくことだけを目指している企業ではないので、全く問題と捉えていません。ふたつ目のポイントとしては、豊かな中国人達は国外に住んでおり、そこでフェラーリを買うことが多いのです。たとえばオーストラリアやニュージーランド、カナダ、ロンドンでその傾向が多く、あとシンガポールでも少々あります。 Q 日本のマーケットが好調で9月は前年比150%を記録しています。その理由を教えて下さい。 リノ・デパオリ(LD):日本の成長に恩恵を受けているのは事実ですが、先程クネヒテルが述べたように、フェラーリは成長だけを大事に思っていません。基本的には革新的な商品を送り出してゆくことが大事だと思っています。今日発表しました488スパイダーのように革新的な商品を、これからも出してゆきたいと考えています。 Q デパオリさんが新たに韓国も担当されるようになったそうですが、韓国のオーナーは日本のオーナーと違いがありますか。また韓国のオーナーズクラブとか組織などありますか? LD:日本のフェラーリのマーケットと韓国のマーケットでは環境に大きな差があります。日本のマーケットはとても成熟していますが、韓国は新規のためフェラーリにとってこれから発展させてゆく存在です。まずはピロータ・フェラーリやコルセ・クリエンティのF1クリエンティなど、ワールドワイドで成功しているプログラムをもっと導入してゆきたいと考えています。日本のオーナーと同様に韓国のオーナーも情熱的で、ブランドに対する認識が高いので、これからも力を入れてゆきたいと思います。あと、日本のオーナーはフェラーリに対する忠誠心が高く、洗練されています。これは他の国ではあまり見られないことです。 Q 現在のフェラーリは年間総生産台数を約7000台に制限していますが、これを増やすことはあるのでしょうか。 DK:7000台という数値は変えることはありません。ひとつの国のマーケットが成長しても、私たちは生産台数を変えることはしません。デリバリー・バランスをコントロールしてゆくことが常に大事だと考えています。 Q  フェラーリがニューヨークで株式を上場しましたが、今後の展開に変化が出ますか。 DK:今回のIPOは様々な報道がなされていますが、フェラーリがこれまでずっと強みにしてきたエクスクルーシブ性については、絶対変わりません。その部分は我々の根幹の部分ですので変えることはありません。社内のシステムが変わることがあるかもしれませんが、お客様への影響は無いと考えています。また、株主からSUVを作れという声が出ても、フェラーリにはそぐわないクルマですので否定します。 Q  アジアと日本での458のクーペとスパイダーの販売比率を教えて下さい。 LD:日本のマーケットでは他の国よりスパイダーが強い傾向があります。458ではリトラクタブル・ハードトップが導入されたこともあり、スパイダーの人気が高く半々くらいでした。488ではスパイダーがもっと伸びると考えています。日本のお客様にスパイダーは以前より根強い人気があり、スパイダーが好きというお客様が多いですね。この488スパイダーについても日本での人気があるものと考えています。デザインやダイナミック・コントロールを採用したことにより、新たなお客様を引き込めるのではないかと考えています。 DK:オーストラリアやニュージーランドではクーペがスパイダーよりちょっと多い比率ですが、他のアジア諸国ではクーペが強く約65%を占め、スパイダーが35%になります。シンガポールなどではオープンで走らせることが少ない傾向にあります。 Q 先頃静岡に新たなサービス拠点がオープンしましたが、このあと国内に新たな拠点を展開する予定はありますか。 LD:フェラーリはサービス・ネッワークも含め日本で長い歴史を持っています。その中で今後もますます利便性やサービスを、パートナーと共に進めてゆくことに変わりはありません。静岡はフェラーリにとって大事なエリアで、ここにオープンしたことにより静岡のお客様は恩恵を受けることになりました。既存のサービス・ネッワークも、より良いサービスと革新的なサービスを提供して行くために、新たなチームを組んで強化して参りたいと考えています。 Q 488GTBと488スパイダーのデリバリー時期はいつ頃になりますか。 LD:488GTBの導入は順調に推移しており、年末までに1台目の納車が行われる予定です。488スパイダーのデリバリーについては来年の春からを予定しています。 本日はありがとうございました。
text & photo:Kazuhide Ueno (上野和秀) 取材協力:Ferrari Japan (フェラーリ・ジャパン)

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