ルーテシア・ルノー・スポール・トロフィー

公開 : 2015.11.17 23:50  更新 : 2022.12.12 21:29

  • ライバルは、VWポロGTIの3,275,000円(M/ T)、3,375,000円(DSG)やプジョー208GTi、3.220,000円などである。この3台で実車テストを行うとどうなるのか? 興味は尽きない。

車重1290kgに対して最高出力220psと26.5kgmの最大トルクがもたらす加速は、手の内に収まる痛快さを持っている。回転計の針がレッド・ゾーンの6500rpmをさらに超えるあたりからヴウウンという男性的な低音のエグゾースト・サウンドが聞こえて来る。

全開にしても、トラクション・コントロール等の電子デバイスのおかげもあって車両はきわめて安定している。

ステアリングはクイックかつ正確で、狙ったラインを走ることはたやすい。トルクステアは軽微で、ロールはほとんどしない。乗り心地は硬めで、時おり内蔵脂肪が揺さぶられる。ときに跳ねる。ただし、タイヤの当たりにまろやかさがある。ハードボイルドではあるけれど、激辛ではない。

ラリーで鍛えられたHCC(ハイドロリック・コンプレッション・コントロール)なる技術を使ったザックスのダンパーが路面からの入力を受け止めてくれるそうだけれど、試乗したターンパイクとその周辺の一般道は路面が平滑なので、その効果のほどはうかがい知れない。バンプ・ストッパーが働くぐらいの凸凹路面で能力を発揮する。筆者の10年落ち、走行距離60,000kmのルーテシアR.S.より上下動は断然小さい。

中低速トルクが十分なため、特にギアダウンしなくてもスイスイ走る。そのことは来日した2014、15年のフランス国内ラリー2WD部門のチャンピオン、エマニュエル・ギグ選手の隣に乗せてもらってよくわかった。筆者は低いギアでエンジン回転をレッド・ゾーン内まで回して喜んでいた。けれど、それ以上の速さをチャンピオンは2500rpm程度で得て、沈着冷静、快適かつ合理的にターンパイクを駆けぬけるのだった。

ルーテシアR.S.トロフィーはホットだけれど、どこかクールさを秘めている。それはターボ・エンジンだからだろうか。

記事に関わった人々

  • 今尾直樹

    Naoki Imao

    1960年岐阜県生まれ。幼少時、ウチにあったダイハツ・ミゼットのキャビンの真ん中、エンジンの上に跨って乗るのが好きだった。通った小学校の校長室には織田信長の肖像画が飾ってあった。信長はカッコいいと思った。小学5年生の秋の社会見学でトヨタの工場に行って、トヨタ車がいっぱい載っている下敷きをもらってうれしかった。工場のなかはガッチャンガッチャン、騒音と金属の匂いに満ちていて、自動車絶望工場だとは思わなかったけれど、たいへんだなぁ、とは思った。

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